研究実績の概要 |
早期診断が難しい深在性真菌症であるムーコル症(接合菌症)の早期診断法の開発研究に取り組んでいる。深在性真菌症は一般に免疫抑制患者に発症する。主要な深在性真菌症であるカンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコックス症には、それぞれβグルカンやアスペルギルスガラクトマンナン抗原、クリプトコックスグルクロノキシロマンナン抗原等の血清診断法があり、早期発見のためスクリーニング検査が臨床応用されているが、ムーコル症には存在しない。本研究はムーコル症の原因微生物の代表であるRhizpis oryzae由来の蛋白(RSA抗原)を精製して、ウサギに免疫してポリクローナル抗体を作成し、抗原検出ELISAキットを作成した。R.oryzae感染マウスモデルでは、血清中にRSA抗原を検出することに成功し、論文報告した((Sato K, Kakeya H, et al. Identification of a Novel Rhizopus-specific Antigen by Screening with a Signal Sequence Trap and Evaluation as a Possible Diagnostic Marker of Mucormycosis. Med Mycol, 2017.)。また、国立感染症研究所と共に本方法に関する特許出願を行った。 また、大阪市大工学部との共同研究にてRSA抗原のモノクローナル抗体の精製に成功した。モノクローナル抗体の精製は、精度の高い検査キットの作製に重要であり、モノクローナル抗体を用いたELISAキットでも感染マウス血清中にRSA抗原を検出すること確認された。また感染マウス肺胞洗浄液中にも同抗原を検出することに成功した(投稿準備中)。現在は、RSA抗原の特定および患者血清中の抗原検出が可能かどうか、臨床応用への研究を進めている。
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