研究課題
microRNA(miRNA)は、タンパク質をコードしない22塩基程度の1本鎖RNAであり、細胞内で転写調節因子として機能し、様々な疾患の病態に関与していることが近年報告されている。miRNAは細胞内で産生され細胞外に放出されるが、血液中にも存在しその測定も可能になってきた。結核症においては既に病態に関与しうるmiRNAが複数報告されており、同じ抗酸菌症である肺MAC症においても病態に関与するmiRNAの存在が推測される。我々は先行研究において、肺Mycobacterium avium complex (MAC)症患者の血清でhsa-miR-346が有意に上昇していること、MAC感染ヒト末梢血単核球由来マクロファージ(ヒトマクロファージ)でhsa-miR-346分泌が亢進していることを確認した。更に、MACが感染しうる宿主細胞であるヒト気道上皮細胞株BEAS-2Bを用いてMAC感染実験を行ったところ、感染細胞と未感染細胞で感染24時間後の培養上清中hsa-miR-346濃度に有意な差は認められなかった。また、ヒトマクロファージにラテックスビーズを貪食させたところ、24時間後の培養上清中でhsa-miR-346分泌亢進は認められなかった。以上のことから、MAC感染によるヒトマクロファージからのhsa-miR-346 分泌促進が確認された。また、慶應義塾大学医学部倫理委員会承認(承認番号:20130134)の下、診断が確定した無治療肺MAC症患者 2名の治療開始後の喀痰培養検査結果と血清hsa-miR-346濃度の経時的変化を評価したところ、血清hsa-miR-346濃度が、喀痰培養検査結果から推測される疾患活動性と相関していた。以上よりhsa-miR-346は、肺MAC症の疾患活動性の指標となるバイオマーカーの候補と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
予定していた細胞実験に加え、肺MAC症患者を対象に、喀痰培養検査結果から推測される疾患活動性と血清hsa-miR-346濃度の相関関係を検討した為、やや時間を要した。
今後、細胞レベルまたは個体レベルで、肺MAC症へのhsa-miR-346の関与をさらに明確にし、miRNAを介した肺MAC症の病態を解明する。
予定していた実験計画を変更して必要消耗品を購入した結果、予定支出額より実支出額が下回った。
次年度の研究費と合わせて消耗品購入に充てる予定である。
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