研究課題
microRNA(miRNA)は、タンパク質をコードしない22塩基程度の1本鎖RNAであり、細胞内で転写調節因子として機能し、様々な疾患の病態に関与していることが近年報告されている。miRNAは細胞内で産生され細胞外に放出されるが、血液中にも存在しその測定も可能になってきた。我々はこれまでに、肺Mycobacterium avium complex (MAC)症患者の血清でhsa-miR-346が有意に上昇していること、MAC感染ヒト末梢血単核球由来マクロファージ(ヒトマクロファージ)でhsa-miR-346分泌が亢進していることを確認した。更に、クラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールによる6か月以上の治療後、喀痰培養が陰性化した肺MAC症患者 5名と喀痰培養が陰性化しなかった肺MAC症患者 6名の治療開始前後の血清hsa-miR-346濃度を比較した。喀痰培養が陰性化した肺MAC症患者では治療前後で血清hsa-miR-346濃度の有意な低下、喀痰培養が陰性化しなかった肺MAC症患者では治療前後で血清hsa-miR-346濃度の有意な上昇を確認した。喀痰培養検査結果から推測される疾患活動性と血清hsa-miR-346濃度の相関関係、肺MAC症の病態とhsa-miR-346の関連性が示唆された。ヒトマクロファージにMACと同じ抗酸菌である結核菌H37Rvを感染させ、リアルタイムPCR法により細胞上清中のhsa-miR-346濃度を測定したところ、結核菌未感染マクロファージの上清中のhsa-miR-346濃度に比べ、有意に高かった。以上より、hsa-miR-346は肺MAC症に限らず、結核等を含めた抗酸菌症の病態に関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
抗酸菌症におけるhsa-miR-346の関与を検討するため、MACだけではなく、結核菌を用いた感染実験も行ったため、やや時間を要した。
今後、細胞レベルまたは個体レベルで、miRNAを介した肺MAC症ならびに抗酸菌症の病態を解明する。
(理由)予定していた実験計画を一部変更して必要消耗品を購入した結果、予定支出額より実支出額が下回った。(使用計画)次年度の研究費と合わせて消耗品購入に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 10件)
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