非結核性抗酸菌細胞壁脂質に対する宿主免疫応答の解明

2016 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 16K09942
• 研究機関: 慶應義塾大学
• 研究代表者: 西村 知泰 慶應義塾大学, 保健管理センター(日吉), 講師 (90348649)
• 研究分担者: 長谷川 直樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (20198724) ; 下田 将之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70383734)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: 感染症

研究実績の概要

非結核性抗酸菌のMycobacterium avium complexによる呼吸器感染症(肺MAC症)は病態が不明であり、診断も困難かつ難治性である。MACは細胞壁にglycopeptidolipid(GPL)を有しており、GPLが宿主免疫応答を誘導し、肺MAC症の病態に関与している可能性がある。そこで、細胞レベル、個体レベルの実験を行い、肺MAC症の病態におけるGPLの病原性を検討する。
GPLはlipopeptide coreと血清型特異糖鎖からなる。MAC細胞壁には、lipopeptide coreであるβ-eliminated GPL(GPL core)、apolar GPL(nsGPL)、血清型特異糖鎖を有したGPL(ssGPL)の3種類のGPLが存在する。GPL core、nsGPL、ssGPLは生化学的性質が異なり、宿主免疫応答も異なる可能性がある。これら3種類のGPLの宿主免疫応答を検討するために、細胞レベル、個体レベルの実験を行う予定であり、大量のMAC菌体からその実験用のGPL core、nsGPL、ssGPLを抽出した。
MACは同じ菌株でもコロニー形態が異なり、Smooth Opaque (SmO)、Smooth Transparent (SmT)、Rough (Rg)の３つに分類される。MAC104株のSmO、SmT、Rgの菌細胞壁脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィーにて成分を分離後、質量分析したところ、SmO、SmTに比べ、RgのGPL含有量が有意に少ないことを確認した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

大量のMAC菌体から純度の高いGPLを抽出するための条件検討に時間がかかった。

今後の研究の推進方策

実施計画に則り、MAC菌体から抽出したGPLを用い、細胞レベル、個体レベルの実験を通し、GPLに対する宿主免疫応答を解明していく。

次年度使用額が生じた理由

質量分析に関係する費用が予定よりも削減出来たため。

次年度使用額の使用計画

当初の計画に則り研究を進め、主に消耗品購入に使用する予定である。

研究成果

• [雑誌論文] Rapid Detection and Typing of Carbapenemase Genes from Carbapenem-Resistant Enterobacteriaceae Isolates Collected in a Japanese Hospital Using the Xpert Carba-R Assay. (2017)
  • 著者名/発表者名: Uwamino Y, Sugita K, Hasegawa N, Nishimura T, Fujiwara H, Iwata S.
  • 雑誌名: Jpn J Infect Dis. 巻: 70 ページ: 124-125.
  • DOI: 10.7883/yoken.JJID.2015.660
  • 査読あり
• [雑誌論文] The First Case Report of Acute Cholangitis and Bacteremia Due to Neisseria subflava. (2017)
  • 著者名/発表者名: Uwamino Y, Sugita K, Iwasaki E, Fujiwara H, Nishimura T, Hasegawa N, Iwata S.
  • 雑誌名: Intern Med. 巻: 56 ページ: 221-223.
  • DOI: 10.2169/internalmedicine.56.7482
  • 査読あり
• [雑誌論文] Clinical characteristics of pulmonary Mycobacterium scrofulaceum disease in 2001-2011: A case series and literature review. (2016)
  • 著者名/発表者名: Suzuki S, Morino E, Ishii M, Namkoong H, Yagi K, Asakura T, Asami T, Fujiwara H, Uwamino Y, Nishimura T, Tasaka S, Betsuyaku T, Takasaki J, Iwata S, Hasegawa N.
  • 雑誌名: J Infect Chemother. 巻: 22 ページ: 611-616.
  • DOI: 10.1016/j.jiac.2016.06.006.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Clinical efficacy and safety of multidrug therapy including thrice weekly intravenous amikacin administration for Mycobacterium abscessus pulmonary disease in outpatient settings: a case series. (2016)
  • 著者名/発表者名: Namkoong H, Morimoto K, Nishimura T, Tanaka H, Sugiura H, Yamada Y, Kurosaki A, Asakura T, Suzuki S, Fujiwara H, Yagi K, Ishii M, Tasaka S, Betsuyaku T, Hoshino Y, Kurashima A, Hasegawa N.
  • 雑誌名: BMC Infect Dis. 巻: 16 ページ: 396.
  • DOI: 10.1186/s12879-016-1689-6.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Macrolide-Resistant Mycobacterium avium Complex Lung Disease: Analysis of 102 Consecutive Cases. (2016)
  • 著者名/発表者名: Morimoto K, Namkoong H, Hasegawa N, Nakagawa T, Morino E, Shiraishi Y, Ogawa K, Izumi K, Takasaki J, Yoshiyama T, Hoshino Y, Matsuda S, Hayashi Y, Sasaki Y, Ishii M, Kurashima A, Nishimura T, Betsuyaku T, Goto H.
  • 雑誌名: Ann Am Thorac Soc. 巻: 13 ページ: 1904-1911.
  • DOI: 10.1513/AnnalsATS.201604-246OC
  • 査読あり
• [雑誌論文] Pharmacokinetics of intravenous peramivir in the airway epithelial lining fluid of healthy volunteers. (2016)
  • 著者名/発表者名: Funatsu Y, Tasaka S, Asami T, Namkoong H, Fujiwara H, Iketani O, Yagi K, Kimizuka Y, Ishii M, Nishimura T, Ogata H, Iwata S, Betsuyaku T, Hasegawa N.
  • 雑誌名: Antivir Ther. 巻: 21 ページ: 621-625.
  • DOI: 10.3851/IMP3096
  • 査読あり
• [学会発表] hsa-miR-346 is a potential serum biomarker of Mycobacterium avium complex pulmonary disease activity (2017)
  • 著者名/発表者名: Tomoyasu Nishimura
  • 学会等名: 第92回日本結核病学会総会
  • 発表場所: 東京国際フォーラム(東京都千代田区)
  • 年月日: 2017-03-23 – 2017-03-24
  • 招待講演
• [学会発表] 肺Mycobacterium avium complex症の病態におけるmicroRNAの役割 (2016)
  • 著者名/発表者名: 西村 知泰
  • 学会等名: 第65回日本感染症学会東日本地方会学術集会・第63回日本化学療法学会東日本支部総会・合同学会
  • 発表場所: 朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター(新潟県新潟市)
  • 年月日: 2016-10-26 – 2016-10-28
  • 招待講演
• [学会発表] 当大学における教職員の10年間の喫煙率推移と禁煙対策 (2016)
  • 著者名/発表者名: 弦巻 美保、清 奈帆美、當仲 香、齋藤 圭美、森 正明、西村 知泰、河邊 博史
  • 学会等名: 第54回全国大学保健管理研究集会
  • 発表場所: 大阪国際会議場(大阪府大阪市)
  • 年月日: 2016-10-05 – 2016-10-06
• [学会発表] 抗IFNγ中和自己抗体が検出された播種性NTM症の3例 (2016)
  • 著者名/発表者名: 南宮 湖、西村 知泰、中村 朗、朝倉 崇徳、鈴木 翔二、加茂 徹郎、鎌田 浩史、石井 誠、長谷川 直樹、別役 智子
  • 学会等名: 第44回日本臨床免疫学会総会
  • 発表場所: 京王プラザホテル(東京都新宿区)
  • 年月日: 2016-09-08 – 2016-09-10
• [学会発表] アスペルギルス沈降抗体陽性である肺Mycobacterium avium complex症患者の臨床的特徴 (2016)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 翔二、朝倉 崇徳、八木 一馬、南宮 湖、浅見 貴弘、鎌田 浩史、上蓑 義典、藤原 宏、西村 知泰、石井 誠、田坂 定智、長谷川 直樹
  • 学会等名: 第91回日本結核病学会総会
  • 発表場所: 石川県立音楽堂(石川県金沢市)
  • 年月日: 2016-05-26 – 2016-05-27
• [学会発表] 医薬品副作用データベース(JADER)を用いた肺Mycobacterium avium complex症の化学療法の有害事象解析 (2016)
  • 著者名/発表者名: 南宮 湖、朝倉 崇徳、鈴木 翔二、八木 一馬、浅見 貴弘、上蓑 義典、舩津 洋平、藤原 宏、鎌田 浩史、西村 知泰、石井 誠、田坂 定智、長谷川 直樹、高橋 佑介、松元 一明、木津 純子、別役 智子
  • 学会等名: 第91回日本結核病学会総会
  • 発表場所: 石川県立音楽堂(石川県金沢市)
  • 年月日: 2016-05-26 – 2016-05-27
• [学会発表] 肺MAC症における新規バイオマーカーの探索 (2016)
  • 著者名/発表者名: 田水 映子、西村 知泰、上蓑 義典、藤原 宏、西尾 和三、中野 泰、岩田 敏、星野 仁彦、長谷川 直樹
  • 学会等名: 第91回日本結核病学会総会
  • 発表場所: 石川県立音楽堂(石川県金沢市)
  • 年月日: 2016-05-26 – 2016-05-27
• [学会発表] 肺Mycobacterium avium complex症患者の気道に定着した緑膿菌がSt.George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコアに及ぼす影響 (2016)
  • 著者名/発表者名: 鎌田 浩史、朝倉 崇徳、鈴木 翔二、八木 一馬、南宮 湖、浅見 貴弘、上蓑 義典、藤原 宏、西村 知泰、石井 誠、田坂 定智、長谷川 直樹
  • 学会等名: 第91回日本結核病学会総会
  • 発表場所: 石川県立音楽堂(石川県金沢市)
  • 年月日: 2016-05-26 – 2016-05-27
• [学会発表] 肺Mycobacterium avium complex症における6分間歩行試験の臨床的意義に関する検討 (2016)
  • 著者名/発表者名: 八木 一馬、朝倉 崇徳、鈴木 翔二、南宮 湖、浅見 貴弘、上蓑 義典、藤原 宏、鎌田 浩史、西村 知泰、石井 誠、田坂 定智、長谷川 直樹
  • 学会等名: 第91回日本結核病学会総会
  • 発表場所: 石川県立音楽堂(石川県金沢市)
  • 年月日: 2016-05-26 – 2016-05-27
• [学会発表] 肺Mycobacterium avium complex症で肺野浸潤影・粒状影の体積は最も肺機能と相関する CT画像解析ソフトを用いた検討 (2016)
  • 著者名/発表者名: 朝倉 崇徳、南宮 湖、八木 一馬、鈴木 翔二、浅見 貴弘、舩津 洋平、鎌田 浩史、上蓑 義典、藤原 宏、西村 知泰、石井 誠、田坂 定智、長谷川 直樹、山田 祥岳、新島 友輝、杉浦 弘明、陣崎 雅弘、別役 智子
  • 学会等名: 第91回日本結核病学会総会
  • 発表場所: 石川県立音楽堂(石川県金沢市)
  • 年月日: 2016-05-26 – 2016-05-27
• [学会発表] 節外性鼻型NK/T細胞リンパ腫と鑑別を要した播種性Mycobacterium marinum症の1例 (2016)
  • 著者名/発表者名: 朝倉 崇徳、石井 誠、南宮 湖、八木 一馬、鈴木 翔二、鎌田 浩史、鹿住 祐子、中田 登、上蓑 義典、藤原 宏、西村 知泰、田坂 定智、星野 仁彦、長谷川 直樹、菊池 拓、清水 隆之、岡本 真一郎、亀山 香織
  • 学会等名: 第91回日本結核病学会総会
  • 発表場所: 石川県立音楽堂(石川県金沢市)
  • 年月日: 2016-05-26 – 2016-05-27
• [学会発表] 肺MAC症患者の健康関連QOLはC反応性蛋白・年齢と負に相関する (2016)
  • 著者名/発表者名: 朝倉 崇徳、石井 誠、舩津 洋平、鈴木 翔二、八木 一馬、西村 知泰、田坂 定智、長谷川 直樹、別役 智子
  • 学会等名: 第113回日本内科学会総会・講演会
  • 発表場所: 東京国際フォーラム(東京都千代田区)
  • 年月日: 2016-04-15 – 2016-04-17
• [学会発表] 結核患者収容モデル事業実施病院における医療従事者の結核感染 (2016)
  • 著者名/発表者名: 西村 知泰、森 正明、横山 裕一、森木 隆典、武田 彩乃、神田 武志、広瀬 寛、和井内 由充子、長谷川 直樹、河邊 博史
  • 学会等名: 第113回日本内科学会総会・講演会
  • 発表場所: 東京国際フォーラム(東京都千代田区)
  • 年月日: 2016-04-15 – 2016-04-17
• [学会発表] インフルエンザウイルス感染後肺炎球菌2次感染マウスにおけるHDAC阻害薬 TSAの保護的効果 (2016)
  • 著者名/発表者名: 八木 一馬、石井 誠、南宮 湖、朝倉 崇徳、鈴木 翔二、藤原 宏、西村 知泰、加茂 徹郎、田坂 定智、岩田 敏、長谷川 直樹、別役 智子
  • 学会等名: 第56回日本呼吸器学会学術講演会
  • 発表場所: 国立京都国際会館(京都府京都市)
  • 年月日: 2016-04-08 – 2016-04-10