研究課題
非結核性抗酸菌症の肺Mycobacterium avium complex(MAC)症の病態解明のため、菌細胞壁脂質、特にglycopeptidolipid(GPL)に対する宿主免疫応答、その病原性を検討した。色々なMAC菌株から菌細胞壁脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)で展開すると、菌株によって脂質のスポットパターンが異なり、菌株による菌細胞壁脂質の違いが確認された。GPLはlipopeptide coreと血清型特異糖鎖からなり、色々な菌株から抽出したGPLを質量分析したところ、菌株によって血清型特異糖鎖が大きく異なり、GPLの化学構造の多様性が確認された。今後、色々な菌株から抽出したGPLを用いて、細胞レベル、個体レベルの実験を実施する予定である。MACは同じ菌株でもコロニーの形態が異なることがあり、大きく、Smooth Opaque(SmO)、Smooth Transparent(SmT)、Rough(Rg)の3つに分類される。前年度、SmO、SmT、Rgの菌細胞壁脂質を抽出し、TLCで展開した際の脂質スポットパターンの違い、更にTLCで分離した成分を質量分析したところ、コロニー形態によるGPLの違いを確認しており、今年度は、GPLの異なるSmO、SmT、Rgを用いたマウス感染実験を実施した。C57BL/6マウスにMycobacterium avium hominissuis104株のSmO、SmT、Rgをそれぞれ経気道感染させたところ、Rg感染マウスでは著明な体重減少、菌の大量排菌、強い肉芽腫性炎症を伴った肺炎の発症を確認した。以上より、菌細胞壁脂質、特にGPLと個体レベルの病原性の関連が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
MAC菌体からの菌細胞壁脂質の抽出、TLC、質量分析による脂質の解析が前年度に比べ、円滑になった。
MACのコロニー形態、菌細胞壁脂質、病原性の関連を更に明らかにする。また、当初の実施計画に則り、MAC菌体から抽出したGPLを用い、細胞レベル、個体レベルの実験を通し、GPLに対する宿主免疫応答を解明していく。
(理由)質量分析に関係する費用が予定よりも削減出来たため。(使用計画)研究計画に則り研究を進め、主に消耗品購入に使用する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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