研究課題/領域番号 |
16K09945
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
北沢 貴利 帝京大学, 医学部, 講師 (90505900)
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研究分担者 |
下川 智樹 帝京大学, 医学部, 教授 (30599270)
上妻 謙 帝京大学, 医学部, 教授 (90365940)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | endocan / 感染性心内膜炎 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
内皮細胞特異的分子-1(endothelial cell specific molecule-1, endocan)はデルマタン硫酸のプロテオグリカンで、腫瘍細胞でも認められ、乳癌、肺癌などで転移、増殖の危険因子となり得る一方、過去の研究で、endocanは感染性心内膜炎を含む感染症疾患において、上昇が持続する特性が明らかとなった。本研究では、endocanの感染性心内膜炎を含む感染症における産生持続性についての機序を明らかにするために、血管内皮細胞におけるendocanの産生の持続性の検証と、持続性を制御する機序の解析を行った。 細胞は正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用い、endocan産生刺激物質として、大腸菌LPSを用いた。刺激後6日間連続で細胞上清を回収し、上清中のendocan濃度を測定した。次に、LPS刺激を連続刺激の細胞と、一定時間(24時間)の限定指摘との細胞とで、刺激後6日間連続で細胞上清を回収し、上清中のendocan濃度を測定し、両者の比較を行った。 この解析によりendocanは6日間連続して産生し続けることが明らかとなった。またLPSの連続刺激と24時間の限定刺激とでは、endocanの産生量は大きな差はみられないことが明らかとなった。 以上より、LPS刺激によりendocanは少なくとも6日間は連続的に産生し、その産生持続性は初期の刺激によって維持されることが示された。 感染性心内膜炎症例における血清endocan濃度を経過の関連性の解析では、感染性心内膜炎の治療開始日を0日として、0、3、7、14、28日、および治療終了後1、3、6か月後の血清を採取し、endocan濃度を測定するための、血清を2例において回収した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染症心内膜炎症例における血清endocan濃度と病態進行の関連性を解析する臨床研究は平成28年度内に症例の登録が完了せず、継続して症例の収集、データ解析が必要となった。内皮細胞におけるendocanの産生機構の解析については、その産生持続性が明らかとなり、細胞内シグナルの関与について平成29年度以降も継続して解析を行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究では、感染性心内膜炎の症例の収集が更に必要であり、継続して症例の収集、データを解析し、endocanの関与についての検討を行う予定である。
基礎研究ではLPSによるendocanの産生持続性がendocanの産生・分泌の誘導因子であると考えた場合、TNF-αを介する間接的な結果なのか、LPSを介した直接のシグナル伝達によるものか明らかとなっていない。まずTNF受容体での結合を阻害し、endocanの産生・分泌がどの程度抑制されるかを解析する。HUVECを用いTNF-αの受容体に対する結合抑制にはTNFR1及びTNFR2の中和抗体を処理する。LPS刺激によりendocanの分泌が、中和抗体未処理の細胞と比較して相違があるのかをELISAを用いて定量する。この解析から、endocan産生・分泌の主たる原因が、PAMPsによる直接作用なのか、サイトカインストームと呼ばれるTNF-αなどの過剰産生がもたらしているかを推測できる。TNF受容体で制御されなかった場合、細胞内シグナルがendocanの持続産生性を制御していることになる。まずはmRNAの発現量を測定し、細胞内での産生持続性がどこで制御されているのかを明らかにする。 また、endocanがLPS以外のPAMPsでもendocanの産生能を有する可能性が推測されるが、誘導するPAMPsの特異性を検証した報告はない。本研究では黄色ブドウ球菌由来のペプチドグリカン、真菌由来のZymosan、ssRNAといった代表的PAMPsで刺激し、endocanが産生されるのかELISA法を用い研究協力者が解析する。この解析でendocanの産生が、特定のPAMPsのみ誘導されるのか、敗血症全般でおこる現象かを確認できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床研究において、血清中のendocan測定を行わなかったため、ELISAキットを購入しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度において十分数の症例が集積され次第、endocan ELISAキットを購入の上測定の予定である。
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