研究実績の概要 |
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)・2型(HSV-2)、ならびに水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の3種類のαヘルペスウイルスに対して、O-メチル化フラボンの一種である4’, 5, 7-trihydroxy-3’, 5’-dimethoxyflavone(tricin)が増殖阻害効果を示すことを発見した。既存の抗ウイルス薬アシクロビル(ACV)を補強または代替する薬が待ち望まれる中、本研究ではtricinの実用化に向けて、抗ウイルス作用のメカニズム解明と動物実験モデルにおける有効性確認を研究の二本柱としている。予備実験として、HSV-1, HSV-2およびVZVに対するtricinの作用を確定するために、種々の培養細胞(Vero細胞、HEL細胞、ARPE-19細胞、MeWo細胞)における増殖抑制試験を行い、各ウイルスのIC50値を細胞株ごとに算出した。その結果、ACVが効きやすい細胞(Vero細胞、HEL細胞、MeWo細胞)ではtricinのIC50値はACVよりも大きかったが、ACVが効きにくいARPE-19細胞では、HSV-1に対してはACVとtricinは同等、さらにVZVに対してはACVよりもtricinの方がIC50値が小さく、より効果的であることが分かった。またHSVの前初期遺伝子(ICP4、ICP22)や初期遺伝子(UL30)、ならびにVZVの前初期遺伝子(IE62, IE63)や初期遺伝子(ORF28)等の発現をACVとtricinとで比較したところ、IC50値を反映するように、Vero、HEL、MeWo等の細胞ではtricinよりもACVの方が強く抑制していたが、ARPE-19細胞におけるVZVの遺伝子発現は、ACVよりもtricinの方が強く抑制しているという結果が得られた。
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