研究課題
アルコール依存症者は易感染性であるため、腸内細菌叢からBacterial translocationが起こり敗血症死に至ることが多い。アルコール依存症者において、易感染性を導くM2bマクロファージの優位な存在が敗血症に至る原因の一つであるが、断酒を行う事によりそのM2bマクロファージが抑制され感染性は回復するが、そのM2bマクロファージの出現する機序は不明である。末梢血のImmature Myeloid cell (IMC)はマクロファージを含む様々な免疫担当細胞の感染抵抗性を抑制する事が知られているが、このIMCがM2bマクロファージ誘導に関与していると考え、アルコール依存症者におけるIMCの性質とEnterococcus faecalis(E. faecalis)感染に対するこのIMCの影響を調べた。健常人及びアルコール依存症者の末梢血由来IMCを単離しレチノイン酸レセプター(RAR)の発現調べたところ、健常人由来IMCの大半においてRARが発現しているが、アルコール依存症者由来IMCはほとんど発現していなかった。健常人由来IMCはレチノイン酸 (RA)にてCD19陽性細胞へ成熟するが、アルコール依存症者由来IMCは成熟しなかった。次にIMCの表面マーカーを調べたところ、CD10陽性CD34陽性で、また細胞内蛋白であるPax5陽性の細胞が多く存在し、そのIMCはCD10+CD34+Pax5+細胞(Pre-Pro-B細胞)を多く含む事が明らかとなった。次にこのPre-Pro-B細胞の培養上清を健常人末梢血由来単球に添加し培養したところ、M2bマクロファージを誘導した。その培養上清にはHMGB1が含まれる事が判明し、現在そのHMGB1刺激によりM2bマクロファージが誘導されるか検討中である。
3: やや遅れている
M2bマクロファージを誘導する機序についてほぼ明らかとなりつつあるが、アルコール依存症患者からの検体採取が遅れているため。
今後はこのPro-Pre B細胞の培養上清に含まれるHMGB1の影響について、さらに明らかにする必要がある。アルコール依存症患者に認められるPro-Pro B細胞をレチノイン酸にて分化誘導することが、同細胞からのHMGB1の産生量を減少させ、M2bマクロファージを誘導せず、最終的に宿主の感染抵抗性を回復させるのではないかと考え、研究を推進する。
アルコール依存症患者からの検体取得が遅れて、実験がやや遅れているため、当該実験費用に充てる予定である。
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