研究課題/領域番号 |
16K09951
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
岩田 奈織子 国立感染症研究所, 感染病理部, 主任研究官 (10360695)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ワクチン / 重症肺炎 / コロナウイルス |
研究実績の概要 |
重症肺炎を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス (SARS-CoV) および中東呼吸器症候群コロナウイルス (MERS-CoV) に対する新規ワクチン開発のため、初年度は免疫原とする各コロナウイルスのスパイクタンパク質の作製を行った。目的のタンパク質はSARS-CoVおよびMERS-CoVのスパイクタンパク質全長(Sect)と中和エピトープ部分を含んだスパイクタンパク質の一部 (S1)の合計4種類とした。これらのタンパク質をバキュロウイルス発現システムにより作製した。SARS-CoVのSectおよびS1、MERS-CoVの Sectについては目的タンパク質の確認ができたが、MERS-CoV S1については、タンパク質が産生されていなかったため、作製し直す事とした。MERS-CoV Sectは抗原として使用するにはタンパク量が足りなかったため、抗体誘導能の検討は、SARS-CoV SectとS1について行った。マウス1匹あたり50ng, 100ng, 500ngに調整したSARS-CoV SectおよびS1の各抗原を金ナノ粒子と混合したもの、混合せずタンパク質のみのものそれぞれを皮下接種し、免疫2週間から3週間後に採血をし、ELISA法で中和抗体産生を調べた。3回目免疫から中和抗体の上昇が見られたが、500ngを免疫した群でも抗体価はかなり低く、また金ナノ粒子のアジュバント効果は確認できなかった。この結果から、1回の免疫に投与する抗原量が500ngでは効果的な中和抗体産生は行えないか、あるいは今回作製したタンパク質は夾雑物が多く、本来求めるタンパク質の含有量が少なかったため、特異的な中和抗体の産生が少なかったと考えられる。そのため、次年度は精製度の高い目的タンパク質の精製に努め、免疫原の投与量を増加し、感染防御効果と金ナノ粒子のアジュバント効果の再検討を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した通り、作製した免疫原の中和抗体誘導能まで確認できた。今回の実験から、金ナノ粒子のアジュバント効果については検討できなかったが、免疫原の精製度を上げる必要がある事、中和抗体産生にはもう少し抗原量が必要な事が明らかとなり、次の実験につながる基礎データが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
免疫原とするタンパク質の精製度を上げるため、二種類のタグを加えた新たな組換えベクターを作製し、この二種類のタグでカラム精製を行い、夾雑物の混入を極力減らすようにする。この方法により得られたタンパク質で、マウスに免疫を行い、抗体誘導能を確認する。このときの抗原量は初年度に用いた抗原量よりも多くし、確実に抗体誘導可能な抗原量を決定する。それらの結果が得られた後、金ナノ粒子のアジュバント効果についても検討し、ウイルス攻撃実験により防御効果についても確認していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。 平成28年度分についてはほぼ使用済みである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り。
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