研究課題/領域番号 |
16K09953
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
常 彬 国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (50370961)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / 劇症型感染症 / ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
平成29年度、昨年度の続き、次世代シーケンサーで解読した劇症型感染症患者より分離された 21 株の肺炎球菌、および健常者の後鼻腔から分離され、劇症型感染症患者由来菌と同じ血清型および同一(または近縁)のシーケンスタイプを有する24 株の肺炎球菌のゲノム配列をアセンブリした。肺炎球菌のゲノム配列の GC含量は約40%で、4コピーの 5S、16Sと 23S rRNA を保有していることが明らかになった。菌株によって、Open reading frames (ORF) の数が異なるが、約2,000個 ORF をコードしていた。また、劇症型感染症患者由来株と非劇症型感染症患者由来株の ORF の保有状況を比較し、劇症型感染症由来肺炎球菌にあって、非劇症型感染症由来肺炎球菌にはない特異的な ORF の探索を行った。しかし、菌株によるORF の保有状況は多様であり、劇症型感染症由来株に特異的な ORF を抽出できなかった。今後、肺炎球菌の病原性に関連する因子のアミノ酸配列を比較し、劇症型感染症由来株にあり非劇症型感染症由来株では異なる配列または機能しない病原因子などについて探索する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するために、本年度中は次世代シーケンサーで解読した劇症型感染症患者および保菌者由来 45 株の肺炎球菌の全ゲノム配列をアセンブリし、ゲノム情報を獲得できた。肺炎球菌の血清型やシーケンスタイプによらず、菌株ごとに遺伝子の多様性があったため、劇症型感染症由来肺炎球菌に特異的な ORF の探索に時間が予測以上にかかってしまい、まだ解析が進行中であるが、予定していた目的はほぼ達成できたと考え、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、肺炎球菌の劇症型感染症を引き起す病原因子の探索を続けると共に、肺炎球菌の病原性を評価できる in vitro の細胞感染実験モデル系を作成し、肺炎球菌劇症型感染症を引き起こすメカニズムを解明する予定である。 1:次世代シーケンサーで得られたデータの解析を続ける。前年度までに得られた全ゲノムの結果をもとに、劇症型感染症由来肺炎球菌に関連すると考えられる病原因子などについて探索する予定である。 2:培養細胞への感染実験系の作成。肺炎球菌に対する特異的な抗血清を用い、莢膜抗原の抗原性をブロックした肺炎球菌を用いてヒト好中球系細胞に分化させた HL60 細胞およびヒト血管内皮系培養細胞 EA.hy 926 細胞に感染させ、細胞への侵入率が高まるかどうか、安定した侵入率が得られるかどうかを評価し、劇症型感染症患者および保菌者由来肺炎球菌の細胞内での生存性を比較できる実験系を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 年度末納品等にかかる支払いが平成30年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成29年度分についてはほぼ使用済みである。 (使用計画) 上記のとおり。
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