研究課題
深在性真菌症の中でも侵襲性アスペルギルス症は、現在最も有効とされている治療薬を用いてもなお致命率が50%を超える。他の糸状菌感染症も合わせて臨床上大きな問題となっているが、感染成立機構の詳細は未だ明らかになっていない。本研究では、呼吸器感染を引き起こす糸状菌の肺胞上皮細胞との接着及び侵入のメカニズムを解明し、早期診断法と新しい治療法の開発に貢献することを目的とする。平成30年度では、A. fumigatusにおいてCas9蛋白および合成したguide RNAを導入することにより、臨床分離株のCyp51Aに遺伝子変異を導入することに、昨年度成功したが、この方法を応用してCyp51Aの、薬剤耐性に関わると予想されるアミノ酸変異を導入することにより耐性への寄与を検証した。単一でアゾール耐性を賦与すると推測される6種類のアミノ酸変異、および、TR34/L98H、TR46/Y121F/T289A、TR53の3種類のTRシリーズについてそれぞれ、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術により塩基置換やプロモータ配列挿入を行った。感受性試験を行った結果、一部を除いて過去の報告と同様の傾向を示した。この遺伝子改変法は、臨床分離株や他の遺伝子についても応用でき、今後、アスペルギルスの肺胞上皮細胞との接着及び侵入のメカニズムを解明するのに有用である。また、昨年度までにゲノム解読が終了した、多剤耐性真菌Scedosporium prolificansおよびCunninghamella bertholletiaeについては、現在、Cas9/CRISPRゲノム編集技術の導入を試みている最中であり、今後、病原性に関わる遺伝子の改変により接着・侵入のメカニズムの解明を目標に研究を進めていく。
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