ノロウイルスは小腸上皮に発現する血液型抗原を識別して感染する個体を決めている。ノロウイルス感染への感受性は個体の血液型によって異なる。しかし、 ノロウイルスの流行拡大前後の疫学解析と、流行したウイルス株の血液型抗原への結合能の解析が両立されている報告はこれまでにない。本研究課題において、 流行株の疫学解析と血液型抗原への結合能のin vitroにおける解析を両立させた研究を実施する。 本研究課題では、ネパールにおいて2009年を境に急激に流行を拡大させたGII.13遺伝子型株を解析の対象とし、以下の1)-3)の順に解析を進めることによっ て、ノロウイルスの血液型抗原結合能獲得が流行の規定要因であるという基本原理を証明する。1) ノロウイルスGII.13遺伝子型の感染拡大前のNPL2008株のウイルス様中空粒子(VLP)の作製、感染拡大後のNPL2009株のVLP作製、世界的流行株 GII.4遺伝子型株またはGII.17遺伝子型株のVLP作製を行う。2) ELISA、SPRを用いNPL2008株VLP(感染拡大前)、NPL2009株VLP(感染拡大後)、GII.4遺伝子型株またはGII.17遺伝子型株VLP(世界的流行株)の血液型抗原結合能の評価を行う。3) NPL2009株(感染拡大後)の血液型抗原結合能獲得の鍵となるアミノ酸をNPL2008株(感染拡大前)のアミノ酸に置換したVLPを作製し、血液型抗原結合能の減弱または消失を確認する。 令和元年度は、平成30年度に引き続き、2)、3)に取り組んだ。ELISA、SPRを用いNPL2008株VLP、NPL2009株VLP、GII.4遺伝子型株VLPの血液型抗原結合能の評価を行うとともに、NPL2009株の 血液型抗原結合能獲得の鍵となるアミノ酸をNPL2008株のアミノ酸に置換したVLPの作製を試みた。
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