研究課題/領域番号 |
16K09957
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
宮崎 恭行 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主席研究員 (70607233)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウイルス / 細胞性免疫 |
研究実績の概要 |
ワクチンにより誘導される免疫は主に液性免疫(抗体)と細胞性免疫に大きく分類される。細胞性免疫は細胞傷害性T細胞(CTL)と呼ばれるCD8陽性T細胞(CD8+細胞)による感染細胞の殺傷であると考えられ、発症防止に大きな役割を果たしていることが知られている。一方、ウイルスを排除する非細胞傷害性CD8+細胞の存在を示唆する報告が様々なウイルス感染症において報告されている。しかしながら、この非細胞傷害性CD8+細胞のウイルス抗原排除の作用機序についてはほとんど分かっていない。本研究ではこの非細胞傷害性CD8+細胞の作用機序を解明することにより、より安全で効果的なワクチン開発の基盤を作ることを目的としている。 申請者らの研究室では強い細胞性免疫誘導能に定評のあるワクシニアウイルスにC型肝炎ウイルス(HCV)の遺伝子を組み込んだ組み換えワクシニアウイルス(rVV)とHCV-トランスジェニックマウスを用いた動物感染実験を行ってきた。当初の研究計画では研究初年度はこのHCV-トランスジェニックマウス/ rVVを用いた研究を計画していたが、研究計画の二年目以降に計画していたデングウイルス由来の遺伝子を有するrVVの作製を行った。これは現在の日本および世界での社会的状況を鑑みてのことである。 また、デングウイルスはヒトには感染するものの、野生型のマウスではほとんど増殖しない。このため、デングウイルスがよく増殖し、且つワクチンによる免疫応答を十分に付与することを目的としたマクロファージ(単球を含む)特異的なI型インターフェロンノックアウトマウスの導入を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではワクチンにより誘導される免疫のうち細胞性免疫の特に非細胞傷害性CD8+細胞の作用機序を解明することにより、より安全で効果的なワクチン開発の基盤を作ることを目的としている。 上述のように当初の研究計画では研究初年度はこのHCV-トランスジェニックマウス/ rVVを用いた研究を計画していたが、研究計画の二年目以降に計画していたデングウイルス由来の遺伝子を有するrVVの作製を行った。 また、一方、I型及びII型インターフェロン受容体を欠損させたノックアウトマウスではデングウイルスはよく増殖し、人で見られるような症状を呈する。このことから、このノックアウトマウスがデングウイルスの動物モデルとしてよく用いられるが、II型インターフェロン応答がないために、免疫委誘導能が低く、ワクチンの評価系としては向かない。そこで、現在報告されているデングウイルスに感受性を持つマウスの中で、最も免疫応答性が高いトランスジェニックマウス(マクロファージ・単球特異的なI型インターフェロンノックアウトマウス)の導入を行った。 このように当初の研究計画とは順序が異なるものの、二年目以降に懸隔していたデングウイルス遺伝子を有するrVVの作製およびその評価系となるトランスジェニックマウスの導入を行ったことから、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度で作製・導入したデングウイルス・マクロファージ・単球特異的なI型インターフェロンノックアウトマウスの系を用い、ワクチンにより誘導される免疫のうち細胞性免疫の特に非細胞傷害性CD8+細胞の作用機序を解明する。 精製したrVVをマウスに2週おきに2回皮内接種し、免疫する。2回目のrVV接種後、2週後のマウスの脾臓からCD8+細胞を分離する。ウイルス抗原特異的CD8+細胞はrVV免疫マウス脾臓細胞をウイルス抗原ペプチドで刺激し、1週間培養を行う。ウイルス抗原特異的CD8+細胞をCD8抗体とIFN-γ抗体で染色し、FACSにより確認する。標的細胞は遺伝的背景を同じマウスの肝細胞にウイルスを感染させたものを使用する。 上記で分離したCD8+細胞(CD107a+)及びCD8+細胞(CD107a-)にHCV陽性細胞を加える。このことにより、パーフォリンやグランザイムなどを放出するCTLとCTL活性のないと考えられてきたCD8+細胞(CD107a-)の機能を検討する。標的細胞にCD8+細胞培養上清を加え、ウイルス量の変化及び細胞傷害マーカーであるALT値を検討する。非細胞傷害的なウイルス量の減少が見られた際は細胞からRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いた遺伝子発現プロファイリングなどの詳細な解析を行う。 以上の研究により、ワクチンにより誘導される免疫のうち細胞性免疫の特に非細胞傷害性CD8+細胞の活性に必要な因子の絞り込みを行い、その作用機序の解明に迫る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では研究初年度はこのHCV-トランスジェニックマウス/ rVVを用いた研究を計画していたが、現在の日本および世界での社会的状況を鑑みて、研究計画の二年目以降に計画していたデングウイルス由来の遺伝子を有するrVVの作製及びを行った。このため、当初研究計画にあったような予算執行にはならなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の研究計画に加え、次年度以降に計画していたデングウイルスについての研究も併せてできる体制が整ったことから、繰り越した金額についても、研究計画に沿って遂行できると考える。
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