研究課題/領域番号 |
16K09961
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
守田 雅志 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20191033)
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研究分担者 |
長井 良憲 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 客員教授 (30431761)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 副腎白質ジストロフィー / 神経変性疾患 / ペルオキシソーム / 骨髄移植 |
研究実績の概要 |
本研究計画は、炎症性脱髄反応を特徴とする神経変性疾患である副腎白質ジストロフィーの骨髄移植による神経変性抑制メカニズムの解明を目的としてた。本疾患は発病初期の骨髄移植が脱ミエリン化を抑制することが明らかになっていることから、骨髄移植により脳に生着したドナー由来マクロファージ様細胞が神経変性抑制に関わっていると推察される。実験ではGFP発現野生型マウス及びabcd1欠損マウスから調製した骨髄細胞をX線照射したabcd1欠損マウスに移植し、レシピエントマウス大脳の生化学的解析及び遺伝子発現解析を行った。昨年度までに脳内に生着したドナー由来マクロファージ様細胞が極長鎖脂肪酸代謝異常の改善とは異なる機構により神経変性を抑制していることを示した。一方で骨髄移植によりCh25h遺伝子の減少が認められたことから、25-hydroxycholesterolの産生量の低下が神経変性抑制に関わっている可能性が示唆された。またabcd1欠損マウス由来グリア細胞やALD患者線維芽細胞ではCh25h遺伝子発現が増加していた。これらの結果から、骨髄移植ではドナー由来マクロファージ様細胞が脳内のグリア細胞と相互作用し、中枢神経系細胞の25-hydroxycholesterol代謝異常を改善している可能性が推察された。本研究結果は、ミクログリアもしくはアストロサイトの25-hydroxycholesterol代謝異常が発病と関連しているという可能性を示唆しており、本疾患の発病機構の解明に繋がることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本疾患は極長鎖脂肪酸の異常蓄積を生化学的特徴とするが、予想通り野生型マウスの骨髄細胞を移植したレシピエントマウス大脳の極長鎖脂肪酸含量の減少は認められなかった。そこで当初の計画通りドナー由来マクロファージ様細胞を、レシピエントマウス脳のGFPの蛍光からFACSでソーティングを行い、RNA抽出をして遺伝子発現の解析を試みたが、遺伝子発現を解析するのが困難であった。そこで、DNAチップによる網羅的遺伝子発現解析の結果から、レシピエントマウス大脳において骨髄移植により変動する候補遺伝子についてreal-time PCRによる解析を行っている。一方、骨髄細由来マクロファージ、及び脳由来アストロサイトやミクログリアの初代培養系を用い、in vitroでのコレステロール代謝や炎症性サイトカイン産生について解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄移植によりCh25h遺伝子で発現の減少が認められたので、この酵素の代謝産物である25-hydroxycholesterolと神経変性との関連性についてin vitroの実験系で解析を行う予定である。 またabcd1欠損マウスではALD患者の様な表現型(脱ミエリン化)は示さないことから、脱ミエリン化に直接関わる炎症反応への効果をみるのは困難と予想される。従って、活性化したアストロサイトやミクログリア、もしくは患者由来線維芽細胞やヒト由来モデル細胞をゲノム編集技術により作製し解析する予定である。その上で、ドナー由来マクロファージ様細胞とグリア細胞の共培養実験を行い、in vitro系での骨髄移植モデルを構築し、骨髄移植による神経変性抑制のメカニズムについて解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画初年度でレシピエントマウス大脳から調製したドナー由来マクロファ-ジ様細胞をFACSにより回収し、DNAマイクアレイによる網羅的遺伝子解析をする予定であったが、計画を変更しため、初年度からの繰り越し分が生じ、その分が次年度使用額になっている。 次年度は、神経変性抑制機構を解明するためにグリア細胞の初代培養を行い、25-hydroxycholesterolに対する炎症反応について解析を行う予定である。このための抗体やサイトカイン定量用試薬、質量分析用の試薬を購入する予定である。さらに最終年度で計画していたin vitro実験系での共培養実験を構築し、ドナー由来マクロファージ様細胞が産生する神経変性抑制に関わる因子の同定を行う予定である。そのため、ゲノム編集関連試薬やトランスウェルなどの培養器具等を購入する予定である。
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