研究課題
ウィリアムス症候群は、7番染色体長腕(7q11.23領域)にある、約28個の遺伝子の部分欠失によって生じる染色体微細欠失症候群の 代表的な疾患の一つであり、その臨床症状は非常に多彩である。しかし、多様な症状を呈する原因の大部分は未解明であり、欠失領域にある遺伝子の解析だけでは不十分になりつつある。我々のこれまでの研究から、ウィリアムス症候群は欠失領域にある遺伝子だけでなく、他領域を含む複数の遺伝子からなる遺伝子発現異常が表現型に関与すると考えられた。しかし、このようなゲノム全域での遺伝子発現異常の原因や臨床症状との関係は明らかになっていない。遺伝子の発現を調節する重要な因子の一つとして、マイクロRNAが知られており、近年、精神神経疾患との関係が多数報告されている。1種類のマイクロRNAは、複数の遺伝子を調節しており、標的遺伝子のタンパク質への翻訳を阻害することで、標的の遺伝子発現を抑制することが知られている。マイクロRNAを介した遺伝子発現制御ネットワークの解析により、症状に関わる複数の遺伝子を標的とするマイクロRNAが同定できれば、病態の解明だけでなく、そのマイクロRNAをターゲットとした治療への応用が期待される。そこで本研究では、患者検体を用いて疾患特異的な遺伝子発現およびマイクロRNA発現プロファイルを明らかにし、さらに共発現ネットワーク解析等のバイオインフォマティクスの手法を適応することで、ウィリアムス症候群の遺伝子発現異常におけるマイクロRNA の関与および臨床症状との相関について明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
ウィリアムス症候群(30名)および健常群(30名)の血液から抽出したmiRNAを用いて、miRNAマイクロアレイ解析を実施した。その結果、複数のmiRNAがウィリアムス症候群において有意な発現変動を示した。さらに、発現変動を認めたmiRNAについてqRT-PCRを用いて確認実験を行った。
バイオインフォマティクス手法を用いて、同定したmiRNAに対する標的遺伝子を探索するとともに、共発現ネットワーク解析を試みる。また、遺伝子発現解析についても集めた検体を用いて、実施する予定である。
網羅的遺伝子発現解析に用いる試薬等は消費期限が早いため、実験直前に購入する必要がある。研究は順調に進んでいるが、網羅的遺伝子発現解析等の実験を昨年度中に実施することができなかったため、次年度に使用することとなった。
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