研究課題
本研究では、小児の各腹部手術周術期の血中グレリン濃度の推移を検討した。具体的には小児の腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術、臍ヘルニア手術、良性腫瘍切除術、胃瘻造設術、噴門形成術、ヒルシュスプルング病根治術、先天性胆道拡張症根治術、胆道閉鎖症根治術、生体部分肝移植手術などである。小児外科疾患が成人と比較して稀な疾患が多いため、現在も症例を蓄積して解析をすすめている。以上の手術のうち、生体部分肝移植手術が目標数に達したため、胆道閉鎖症術後の生体部分肝移植手術患児を対象に解析を行った。その結果、小児生体部分肝移植手術において、術後血中グレリン濃度を大きく低下し、徐々に回復することが明らかとなった。また術後1日目の血中グレリン濃度は肝逸脱酵素や阻血時間と負の相関関係を認めた。基礎研究において、内因性のグレリンが肝臓の虚血再灌流モデルにおいて肝保護効果を認めるとの報告があることから、本検討においても移植肝の虚血再灌流傷害からの回復に内因性のグレリンが消費されて、術後に血中グレリン濃度が大きく低下した可能性が示唆された。虚血再灌流傷害は肝移植において大きな問題の一つであり、早期の移植肝不全の原因の10%を占めており、また急性・慢性拒絶反応の発症とも関連している。以上より、周術期にグレリンを補充することで虚血再灌流傷害等の移植肝への傷害を軽減させ、これらの合併症予防につながる可能性が示唆される結果が得られた。本結果は2018年に31st International Symposium on Pediatric Surgical Researchで発表し、Pesiatric Surgery Intrernational(2019 [Epub ahead of print])に掲載予定である。
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Pediatric Surgery International
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10.1007/s00383-019-04463-8.