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2016 年度 実施状況報告書

早産児・双胎児における乳児期の睡眠行動と幼児期の行動発達評価との関連について

研究課題

研究課題/領域番号 16K09968
研究機関神戸大学

研究代表者

高田 哲  神戸大学, 保健学研究科, 教授 (10216658)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード睡眠行動 / 極低出生体重児 / 双胎児 / 行動発達 / 音声解析 / 自閉スペクトラム症
研究実績の概要


1.早産児を対象に2歳前後に行動発達を評価し、1500g未満の体重で生まれた児では、他者の視線を追いかけたり、指さしに反応したりするために、正常の体重で生まれた児より多くの手がかりを必要とすることを報告した。
2.自閉症のある児では、通常の発達特徴を持つ子どもに比べて睡眠行動の異常を示がす頻度が高いことを報告した。
3.子どものチェックリストを用いて、インドネシア及び日本において、自閉スペクトラム症のある子どもの特徴的な行動パターンを報告した。
4.双胎で生まれた乳児5組とその母親5名を対象に、新生児期から乳児期にかけて経時的に睡眠パターンを計測した。睡眠計測には、睡眠日誌と共にアクチグラフ(加速度センサー内臓の睡眠記録器)を各児の足首並びに母親の手首に装着し、連続7日間の計測を行った。夜間の覚醒時間は、予定日より数えて(修正月齢)3-6週(219.5分)から8-15週(130.7分)にかけて急速に減少し、その後は、13-15週(115.0分)、17-20週(123.3分と)ほぼ一定であった。また、一日の睡眠時間全体の中で、夜間睡眠時間の占める割合は、修正月齢3-6週(57.5%)、8-15週(63.6%)、13-15週(65.5%)、17-20週(69.6%)と月齢とともに有意に増加した。1分ごとに双胎両児の睡眠状態を照合したところ、全5組とも月齢が進むにつれて、双胎両児の睡眠パターンが同期しするようになった。同室に眠る場合、両児が別々の睡眠行動をとる割合は月齢が進むにつれて減少した。さらに、同時に計測した母親の睡眠パターンより、双胎2児の睡眠の同期が進むに連れて母親の睡眠時間が増加することが明らかとなった。現在、この知見に関して論文にまとめている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、1)極低出生体重(VLBW)児や双胎(TW)児などのハイリスク児と正常体重児(NBW)における睡眠リズムの差異を明らかにすること、2)睡眠リズムの異常と共同注意運動、表出性言語などを含めた発達予後との関係を明らかにすることの2点である。
現在までの一連の研究を通じて、行動観察法の信頼性検討を行い、極めて信頼性の高い評価法を同定・確立してきた。これらの研究成果を自閉スペクトラム症(ASD)のリスクが高い極低出生体重児(VLBW)群、双胎(TW)児に応用していこうと計画している。これまでに、VLBW児における共同注意行動の特徴、ASD児の睡眠特徴については、国際誌に投稿し、受理されている。平成28年度には、双胎5組についても経時的な睡眠行動を終え、母親の睡眠行動に合わせてデータ解析を行っている。また、VLBW児52例、正常体重(NBW)児50例に関しても、共同注意行動に関する分析をほぼ完成しつつある。さらに、VLBW児10例に関しても経時的な音声収集を終えた。これらの進捗状況を考えると、まだ、結果の解析には至っていないものの、当初の計画通りほぼ順調に研究計画は進んでいるものと評価できる。
一方で、平成28年度に、自閉スペクトラム症(ASD)評価のための半構造化観察検査(ADOS-2)の日本語版が開発され、日本でも利用できるようになった。国際的にも標準的な検査であるため、本研究の行動発達評価項目として新たに加えることとした。今後、対象とする症例数の増加を諮るとともに、これまでに取得したデータ解析を進めていく予定である。

今後の研究の推進方策

平成29年度は、次のように研究を推進していく予定である。
1.(TW群における睡眠リズム解析) 経時的に集めてきた5組10例のTW例とそれに対応した母親の睡眠行動データにつき、1分ごとに対比させ、TW児間で生じる睡眠の同期に影響を与える要因と母親の睡眠行動に関連する要因をさらに詳細に検討する。
2.(ASDハイリスク群における行動観察及び発達評価) 本年度を通じて対象例数を増やし、TW群での睡眠リズムの同期について経時的に評価を行うとともに、生後18 ヵ月、24 ヵ月(修正)に達した時点で、行動発達評価(CBCL、MCHAT)、表出言語解析(音声解析)、共同注意解析(CHAT-B)を施行する。さらに、新しく日本語版が開発されたASD評価のための半構造化観察検査(ADOS-2)及びCHAT Section Bに準拠して申請者らが開発した共同注意解析法)を実施する。
3.(VLBW群における発達評価) これまでに、行動観察を終了したVLBW 52例(うち 1000g未満のELBW 群29例)について、長期発達予後との関連を検証する。
4.(表出言語の音声解析) 私たちが開発した方法にて解析する。すなわち、収録した音声データの解析収録データの中から、子どもの発声部分を切り出して、1 収録当たり50 語前後の音声を解析用音声データとする。独自に開発したプログラムに、得られた音声データ(拡張子:.wav)とテキストデータ(拡張子:.csv)を入力すると、1/100 秒ごとのピッチ値をもとにしたフォルマント構造が表示され、各母音の構成比、母音と子音の構成比が算出できる。NBW 群、VLBW・TW 群の一人ひとりにつき経時的な解析を行い、発達パターンを数値として捉えたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

本研究では、自閉スペクトラム症(ASD)のハイリスク群として、極低出生体重児、双胎児を出生したご家族に協力を依頼している。平成28年度に予定していた双胎児、早産児の出生数が予想していた数より少なかったために、所定の症例数に達する時期が若干遅れてしまった。そのために、得られた成果を発表する学会を、当初予定していた平成28年度開催の学会から平成29年度に開催される学会に変更した。そのために、国際学会において出席、発表するための旅費、測定に伴う謝金を平成28年度から平成29年度へ繰り越すこととした。

次年度使用額の使用計画

平成29年5月に福岡で、また29年6月にトロントで開催される国際学会に演題を応募し、既に受理の知らせを得ている。各々の学会において成果を発表するために要する旅費、学会参加費として使用する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Joint Attention Development in Low-risk Very Low Birth Weight Infants at Around 18 Months of Age2016

    • 著者名/発表者名
      Yamaoka N, Takada S
    • 雑誌名

      Kobe J Med Sci.

      巻: 62(4) ページ: E89-E98

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Usefulness of the CBCL/6-18 to Evaluate Emotional and Behavioral Problems in Indonesia ASD Children.2016

    • 著者名/発表者名
      Hartini S, Hapsara S, Herini ES, Takada S
    • 雑誌名

      Pediatrics International.

      巻: 58(12) ページ: 1307-1310

    • DOI

      10.1111/ped.13085

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Sleep Problem of Children with Autistic Spectrum Disorder Assessed by Children Sleep Habit Questionnaire-Abbreviated in Indonesia and Japan.2016

    • 著者名/発表者名
      Irwanto, Rehata NM, Hartini S, Satoshi Takada.
    • 雑誌名

      Kobe Journal of Medical Sciences

      巻: 62(2) ページ: E22-E26

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Activity-based assessment of sleep behaviors of twin infants and their mothers from 4 to 9 months postpartum2017

    • 著者名/発表者名
      Chie Kondo, Satoshi Takada
    • 学会等名
      31st ICM Triennial Congress
    • 発表場所
      Metro Toronto Convention Centre (カナダ・トロント)
    • 年月日
      2017-06-19 – 2017-06-21
  • [学会発表] Joint Attention Development in Low-risk Very and Extremely2017

    • 著者名/発表者名
      Noriko Yamaoka Satoshi Takada
    • 学会等名
      14th Asian and Oceanian Congress of Child Neurology
    • 発表場所
      ヒルトン福岡シーホーク(福岡・福岡市)
    • 年月日
      2017-05-11 – 2017-05-14
  • [学会発表] 母児の家族状況と退院後に予測される育児上の問題へのNICU看護師の認識2016

    • 著者名/発表者名
      黒川 麻里、 松田 宣子, 山本 暁生, 高田 哲
    • 学会等名
      第26回日本新生児看護学会学術集会
    • 発表場所
      大阪国際会議場(大阪・大阪市)
    • 年月日
      2016-12-02 – 2016-12-03
  • [学会発表] 幼児期早期の極低出生体重児における行動観察の検討とその評価2016

    • 著者名/発表者名
      山岡 紀子, 高田 哲
    • 学会等名
      第115回日本小児精神神経学会
    • 発表場所
      関内ホール(神奈川・横浜市)
    • 年月日
      2016-06-25 – 2016-06-26
  • [学会発表] NICUの看護師がおこなっている低出生体重児の親への退院にむけた支援の実態2016

    • 著者名/発表者名
      黒川 麻里, 松田 宣子, 山本 暁生, 高田 哲
    • 学会等名
      第63回日本小児保健協会学術集会
    • 発表場所
      大宮ソニックシティ(埼玉・さいたま市)
    • 年月日
      2016-06-23 – 2016-06-25
  • [学会発表] 幼児期早期の低リスク極及び超低出生体重児における共同注意行動の検討2016

    • 著者名/発表者名
      山岡 紀子、高田 哲
    • 学会等名
      第58回日本小児神経学会学術集会
    • 発表場所
      京王プラザホテル(東京・新宿区)
    • 年月日
      2016-06-03 – 2016-06-05
  • [学会発表] 幼児期早期の低リスク極及び超低出生体重児における行動観察の検討2016

    • 著者名/発表者名
      山岡 紀子, 高田 哲
    • 学会等名
      第119回日本小児科学会学術集会
    • 発表場所
      ロイトン札幌(北海道・札幌市)
    • 年月日
      2016-05-13 – 2016-05-15

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公開日: 2018-01-16  

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