研究課題
乳幼児期の発達を評価し、予後を正しく予測することは臨床的に極めて重要である。1.1,500g未満の体重で生まれた早産児(極低出生体重児)を対象に、2歳前後における行動発達を評価したところ、これらの児では、正常の体重で生まれた児に比べて、他者の視線を追いかけたり、指さしに反応したりすることをスムースにできない割合が有意に高かった。2.これらの児を対象に3歳から5歳時にCBCL行動評価表を用いて行動発達を評価したところ、2歳時に行動上の問題が見られてなくとも3歳以降に顕在化する例や、逆に2歳時に問題を認めていても落ち着く例が見られた。今後、さらにフォローアップ症例を増やして、それらにの変化に関連する要因を明らかにしていく予定である。3.双胎で生まれた乳児5組と母親5名を対象に、アクチグラフィ―を用いて新生児期から乳児期にかけて継時的に睡眠パターンを測定した。夜間における児の覚醒時間は、修正週齢とともに有意に減少し、睡眠時間は有意に増加した。一方、1分間ごとに睡眠行動を比較したところ、月齢とともに両児が同じ睡眠行動をとる割合が急激に増加した。また、双生児同士が同床で寝ている場合には、別床で眠っている場合に比べて両児の睡眠状態が同調する頻度が増えた。4.3歳から12歳までの定型発達児198人を対象に、立位バランス機能と手の巧緻運動における年齢に伴う変化及び両者間の相関について検討した。年齢に依存して立位時の動揺値は減少し、ボタン動作に要する時間は減少した。全年齢を通じた解析では、立位バランス機能と手の巧緻運動間に有意な相関を認めたが、年齢が同一の集団では両者間に有意な相関は認めず、直接の関連性は限定的であった。5.1歳前後の極低出生体重児及び定型発達児30名につき、2歳まで1年間にわたり継時的に音声を記録した。現在、独自に開発したソフトを用いて音声分析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
乳幼児期には様々な機能が急速に発達する。一方で、発達上にリスクとなる要因のいくつかは既に判明している。これらのハイリスク児では、様々な観点から発達状況を評価し、将来の問題行動の可能性を予測することが極めて重要である。本研究では、発達上のリスクが高いとされている極低出生体重児、双胎児に焦点を当てて、バランス機能、巧緻動作、共同注意、睡眠、表出性言語能力という多様な能力について定量的に評価し、年齢に伴う変化を明らかにする。さらに、それらの発達の相互の関係性を検証しようとする新規性に富んだ創造的な研究である。現在までのところは、ほぼ順調に複数の発達指標データが獲得できており、その成果に関しては、随時、論文としてまとめてきた。今後は、よりデータ数を増やすとともに発達相互間の関連性について検討していく予定である。
現在までに、極低出生体重児、双胎児に関する乳幼児期のデータ(睡眠パターン、共同注意など)はほぼ取得できている。また、立位バランス機能と上肢巧緻性の関連性についても、定型発達児を対象にデータ収集を終えている。今後、3-5歳時点での行動評価結果と個々の機能発達との関連性について検討を進めていく予定である。ややデータ収集が遅れていた乳幼児の表出音声もほぼ採集が終了したので、発達変化を新たな音声解析ソフトを用いて明らかにしていきたいと考えている。
・必要物品等の価格割引により少額の残余が出た。・翌年度分の物品費の一部としての使用を計画している。
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小児保健研究
巻: 77 ページ: 印刷中
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巻: 124 ページ: 961-973