研究課題/領域番号 |
16K09969
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
小林 弘典 島根大学, 医学部, 助教 (70397868)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アシルカルニチン / 血清 / LC-MS/MS / タンデムマス / 質量分析 / 脂肪酸代謝異常症 / カルニチン |
研究実績の概要 |
LC-MS/MSによる血清アシルカルニチン精密測定法の開発 現在用いられている血清アシルカルニチンは精度管理や測定値の安定化が難しい。本年度の研究では血清アシルカルニチン分析の精密測定法の開発を行った。分析にはヒト血清10μlおよびヒトアルブミン溶液で作成した人工血清10μlを使用した。人工血清には、ヒト血清代替マトリックスを用い、想定されるAC濃度をカバーするように各9濃度に調製した15種のACを含む混合標準溶液を添加し、精度管理試料(QC試料)3濃度も兼ねた検量線作成用の標準試料を調製した。次に血清および標準試料10μlにエタノールを添加し上清を別容器に移動後に乾固し、ギ酸含有アセトニトリルを添加し撹拌後に再度乾固しアセトニトリルで再溶解した。前述の工程で除蛋白およびアシルカルニチンの抽出・精製を行ったのち、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)を用いてMS/MS分析を行った。開発した分析方法については日内変動、日差変動、ばらつき(CV値)等を評価した。 本メソッドにおけるアシルカルニチン濃度測定法は標準試料で検量線を作成したのち定量した。それぞれ、C0およびC2、C3、C4、C5、C5-OH、C5-DC、C6、C8、C10、C12、C14、C14:1、C16、C18は定量範囲で良好な直線性を示した。検量線の相関係数(r)は0.9980~1.000であり、同時に測定したQC試料の測定内及び測定間の再現性(CV)及び正確性(RE)は、全てのACに関してCV=0.3~6.6%及びRE=-6.9~11.0%の範囲であった。臨床検査として行われる血清AC分析は確定診断や治療開始後においては治療効果の判定等にも利用される。今回開発した血清AC分析法では、これまでの課題であった臨床検査としての再現性や正確性、安定性が確保されており、従来法で困難であった精度管理が容易になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり血清アシルカルニチン分析のメソッド作成がほぼ完成しているため。成人の脂肪酸代謝異常症例についてはひきつづき症例集積に努める。
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今後の研究の推進方策 |
新しく作成したメソッドを用いて、過去に診断した症例検体等を用いたバリデーションを行う。また、既存の酵素サイクル法によるカルニチン測定法などとの比較なども行う予定である。 学会発表などを通じて本検査法の有用性を周知し、症例集積に務める。
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次年度使用額が生じた理由 |
LC-MS/MS分析に必要な物品や試薬が当初の予定より少なく検討を進める事が出来た。また、患者の発見が予定どおりすすまなかったことで、それらの確定診断に必要とされる細胞学的、酵素学的な検討に必要な費用が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度ではLC-MS/MS分析数を増やして患者検体等での検討を実施する予定であり、これらの費用に追加予定である。また、本研究成果の発表機会を増やして成人症例を発見できるよう努める。
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