研究課題
1) 脂肪酸代謝異常症の診断に適した血清アシルカルニチン分析法の確立および評価前年度に確立した血清アシルカルニチン分析法を用いて、脂肪酸代謝異常症および有機酸代謝異常症患者のアシルカルニチン(AC)分析ライブラリの作成を開始した。検討に用いたのは、VLCAD欠損症(26検体、以下同様)、TFP欠損症(5)、グルタル酸血症2型(20)、CPT1欠損症(5)、CPT2欠損症(9)、全身性カルニチン欠乏症(4)、HMGL欠損症(1)、プロピオン酸血症(5)、メチルマロン酸血症(6)、グルタル酸血症1型(6)、3-MCC欠損症(6)および対象コントロール20例を用いて検討した。今回確立した方法は旧来の方法に比べて同等以上の感度および再現性を有していることを確かめた。今後、さらに分析する症例数を増やして検討を拡大する予定である。2) 成人脂肪酸代謝異常症の検索および血清アシルカルニチン値の検討確立したAC分析法を用い、成人脂肪酸代謝異常症患者を発見するためのスクリーニング検査を継続した。肝機能障害や骨格筋障害、心筋症、心筋炎などの臨床像を有する患者のスクリーニングを行った。今年度は新たな患者の発見は無かったが、心筋症症例の一部に脂肪酸代謝異常症の疑わせるACプロフィールが見られたため、今後の検討を進める予定である。また、成人グルタル酸血症2型患者において、周産期の血清AC分析結果を経時的に評価している。脂肪酸代謝異常症患者の出産後の代謝不全リスクが注意喚起されており、本症例の経過も今後のエビデンス蓄積に重要な情報を追加できると期待される。
2: おおむね順調に進展している
新規症例の発見は現時点では達成されていないが、成人脂肪酸代謝異常症例の既診断例の分析は順調に蓄積している。また、グルタル酸血症2型症例の周産期におけるアシルカルニチン分析を行うなど、エビデンス蓄積につながる研究を行っている。
最終年度は成果の発表および社会への周知を行い、データを公表するなどして診療に役立つデータベースの公表を目指す。新規症例の発見を目指す取り組みは継続して行い、発見例のフォローアップ等を通じての情報蓄積も継続しておこなう。
旅費およびアシルカルニチン分析に使用する試薬、機器類の必要量が想定よりも少なかった事で前年度未使用の金額が生じた。今年度は前年度の繰越金を使用し、発表の機会を増やすこと、および血清アシルカルニチン分析を増やす事を計画している。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
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