研究実績の概要 |
1)脂肪酸代謝異常症の診断に適したアシルカルニチン分析法の確立および運用 前年度までに確立した分析法と旧来から用いていた分析法を同一検体をもちいた分析を200検体について行い、それらの相関を検討した。C0, C2, C3, C4, C4-OH, C5, C5:1, C5-OH, C5-DC, C6, C8, C10, C10:1, C12, C12:1, C14, C14:1, C16, C16-OH, C18, C18:1, C18:2, C18-OH, C18:1-OHについて基準値を決定した。 2)成人脂肪酸代謝異常症の検索および血清アシルカルニチン値の検討 成人のNASH(非アルコール性脂肪肝炎)発症例についてのアシルカルニチン分析、成人心筋症および心筋炎発症例に対して,今年も継続してアシルカルニチン分析を行い、先天代謝異常症の検索を行った。 また、脂肪酸代謝異常症であるグルタル酸血症2型の母体例の周産期におけるアシルカルニチン分析を連続的に実施した。妊娠後期にかけて母体の血中アシルカルニチンプロフィールは顕著な改善を認めていた。出産後、十分なカロリー摂取などの栄養管理を実施され、身体所見上の増悪は認めなかったにも関わらず、2週間程度をピークとして改善していたアシルカルニチンプロフィールは増悪した。今回の経過は過去に同じく長鎖脂肪酸代謝異常症であるVLCAD欠損症で報告されていた経過に類似していた。今回の経験から、妊娠中はより代謝的な改善が見られる一方、出産後の異化亢進や経胎盤的な代謝プロフィールの改善といったには十分な注意が必要であることが示唆される。今後、同様の情報を蓄積することで疾患毎、また各疾患の重症度における管理指針などが明らかになる事が期待される。
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