研究実績の概要 |
1)脂肪酸代謝異常症の診断に適したアシルカルニチン分析法の確立および運用 前年度までに基準値を作成したアシルカルニチン分析法を用いて先天代謝異常症のスクリーニングを継続した。18例の成人例の分析を行い、新規生化学診断例は0例であった。 2)成人肝硬変患者におけるアシルカルニチン値の検討 成人の肝硬変症54例についてのアシルカルニチン分析を行い、臨床検査値および肝硬変尺度(Child-Pugh)、 QOL尺度(SF-36)との相関を検討した。Child-PughスコアはC0,他の多くのアシルカルニチン値と正の相関を認めた。SF-36スコアはC0, C2, C3, C18:1との正の相関を認めた。血清アシルカルニチン分析は成人領域の肝疾患における病態評価にも有用である可能性が示唆された。 3)成人脂肪酸代謝異常症における遺伝子型の検討 成人患者が多いと考えられるVLCAD欠損症について遺伝子型の検討を行った。成人例の多くは筋型(遅発型)の病型を取ると考えられる。遅発型26例のACAVDL遺伝子を検討したところ、K264Eが13アレルと最も高頻度であり、K382Qが9アレル、R450Hが7アレルと続いた。これらは近年全国的に実施されているタンデムマス・スクリーニングで発見されるVLCAD欠損症患者でも同定されている経にであるが、スクリーニングではC607Sなどの新規変異が好発変異として報告されており、最軽症もしくは無症状例の可能性を指摘されている。成人期に診断される例でこのような変異例が同定されないか、注意を払う必要がある。
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