研究課題
Sotos症候群(SoS)の基本的特徴は、過成長、特異的顔貌、学習障害である。学習障害は、成人期に自立できる軽度のものから、自立困難な重度のものまであり、その程度は様々である。その他にも、骨年齢促進、心奇形、腎奇形、脊柱側彎などを合併する場合がある。その原因遺伝子は、ヒストンH3リジン36メチル化酵素をコードするNSD1遺伝子であり、そのハプロ不全によって発症する。過去にNSD1のノックアウトマウスが作製されたが、ハプロ不全に相当するヘテロ欠損マウスの表現型は正常であり、一方、ホモ欠損マウスは胚性致死を示し、ヒトとは異なる表現型を示した。本研究では、Nsd1遺伝子を大脳皮質、海馬、嗅球特異的にノックアウトすることによって、SoSの学習障害モデルマウスの作製を試みた。ノックアウトマウスの大脳皮質、嗅球、肝臓の組織からRNAを抽出し、RT-PCRにて、大脳皮質、嗅球特異的にNsd1がノックアウトされていることを確認した。またこのノックアウトマウスは野生型に比べて、生後6週までは低体重を示すが、それ以降は正常と体重は変らず、通常の発育を示し、雄、雌共に生殖能力を有していた。しかしながら、このマウスは出生後の生存能力が野生型に比べて弱く、出生後、野生型の仔を一部間引きしなければ、生存できない特徴を持っていた。このことは、このマウスが何らかの脳の障害を持っている可能性を示唆する。現在、このマウスの戻し交配を6回終え、行動表現型解析を行うため、マウスを繁殖させている。一方、Nsd1タンパクの標的遺伝子を同定するために、CRISPR/Cas9により、Nsd1遺伝子の下流に3xTY1タグを挿入したマウスの作製を試みているが、現在のところうまくいっていない。さらなる工夫をすることによって作製する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 備考 (1件)
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http://www.biomol.med.saga-u.ac.jp/mbg/