研究実績の概要 |
ミトコンドリア病は、ミトコンドリア機能異常を呈する難治性疾患である。ミトコンドリア病の発症原因や罹患臓器は多岐に渡るため、原因遺伝子等によっても病態発症機構が異なると考えられる。本研究では、これまでにエクソーム解析を主とする遺伝子検査によって同定された原因候補遺伝子を詳細に解析し、それぞれの原因に応じた疾患の発症機構の違いを解明する。本来ミトコンドリア病の原因と考えられていなかった候補遺伝子がみつかり、これらを重点的に検討した。FLNA, FLNC, TOR1AIP1, CFTRなどが原因候補遺伝子としてみつかった検体でハプロタイプ解析を行い、遺伝形式を明らかにした。また、FLNA, FLNC, TOR1AIP1については、株化細胞でCRISPR/Cas9システムにより遺伝子ノックアウトを行った、その結果、複数のノックアウト細胞を取得した。ノックアウト細胞におけるミトコンドリア機能の変化に関して現在解析を行っている。また、遺伝子機能回復実験のため、遺伝子発現ベクターを作成している。FLNA, FLNCは、共にfilaminというアクチン制御タンパクをコードしており、アクチン動態に関わることが知られている。これに着目し、細胞におけるアクチンとミトコンドリア動態を観察するため、それぞれのリアルタイム観察用ベクターを作成した。今後これらを用い、細胞内におけるアクチンとミトコンドリアの観察を行う。CFTRについては、肝臓組織におけるCFTRタンパク質の消失およびミトコンドリア遺伝子のND4の発現低下を明らかにした。CFTRは嚢胞性線維症の原因遺伝子として一般的に知られているが、本研究においてミトコンドリア機能への影響を明らかにした。これに関しては論文投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
FLNA, FLNC, TOR1AIP1の遺伝子ノックアウト細胞における、ミトコンドリア機能の変化を解析する。また、正常型遺伝子もしくは変異型遺伝子をノックアウト細胞に導入し、レスキュー実験を行う。FLNA, FLNCについては、アクチン制御に関わっており、アクチンとミトコンドリアの細胞内動態を観察する。また、TOR1AIP1は核膜維持に関わることが知られており、ノックアウト細胞における核膜の変化を観察する。CFTRの研究については論文を投稿する。
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