研究課題/領域番号 |
16K09977
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
中島 光業 松山大学, 薬学部, 准教授 (70311404)
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研究分担者 |
古川 美子 松山大学, 薬学部, 教授 (20219108)
奥山 聡 松山大学, 薬学部, 助教 (40550380)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自閉症 / dTgマウス / オキシトシン |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでに、Cre-loxPシステム等での利用を目的に作製された神経堤細胞特異的デリーターマウス( Wnt1-cre, Wnt1-GAL4ダブルトランスジェニックマウス:dTgマウス )が、精神疾患様異常行動を示すことを明らかにした。dTgマウスの雄では自閉症様の異常行動が、一方、雌では統合失調症様の異常行動が認められた。本研究では、当該マウスの行動学的異常の雌雄差を規定する要因を明らかにすることを通して、ヒトの自閉症の発症に性差(雄:雌=4:1)が存在する理由について示唆を与えたい。 申請者はこれまでにdTgマウスの雌においてのみ聴覚過敏と脳内オキシトシン含量低下が認められることを明らかにした。本研究では、dTgマウスの雌で特異的に認められるこれら3種の事象(雌特異的異常行動・脳内オキシトシン含量低下・聴覚過敏)の相互の関係を明らかにすることを通して、ヒト自閉症の発症危険率の性差の謎に挑む。そのために、1)脳内オキシトシンシグナルを変化させ、あるいは、2)聴覚過敏状態を変化させて、雌特異的異常行動が変化する様子を詳細に解析する。 平成28年度には、まず、平成29年度以降に予定している聴覚過敏状態を変化させる実験の準備として、聴覚困難モデルマウス2種の導入とジェノタイピングの樹立を行った。また、行動評価を行うために、遺伝的バックグラウンドの調整(変更)を継続的に行っている。さらに、オキシトシンシグナリングがdTgマウスの行動に与える影響について検討した。野生型マウスにオキシトシンを点鼻投与したところ、雄雌共に垂直ジャンプ行動に変化は認められなかった。一方dTgマウスでは、オキシトシンの点鼻投与によって雄雌共に垂直ジャンプ行動が低下する傾向が認められた。従って、垂直ジャンプ行動のdTgマウスの性差に関しては、オキシトシンが関わっていることを示唆する結果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
dTgマウスにおいてα―MSHシグナリングが減弱的変化を示している可能性についての確認作業が遅れている。その一番の原因は、dTgマウスの遺伝的バックグラウンド(C57B6/slc)の野生型雌マウスによる飼育が順調にいっていないことである。飼育条件などの調整を行う計画である。
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今後の研究の推進方策 |
2014年にZhengらによって、マウスの新生仔期に体性感覚や視覚の刺激を弱めることで脳内オキシトシン含量が低下し、対応する感覚野での興奮性神経伝達が減弱することが報告された(Zheng et al., 2014)。dTgマウスの場合は、雌において聴覚が逆に敏感になっているのであるが、これが原因となって脳内オキシトシン含量低下や雌特異的異常行動が誘発されていることも十分考えられる。そこで本研究では、聴覚刺激を弱めた環境と強めた環境を設定して、dTgマウスの脳内オキシトシン含量低下と雌マウス特異的な異常行動がどのような影響を受けるかについて検討する。 また、達成が遅れているdTgマウスにおけるα―MSHシグナリングについても解析を進める。
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