研究実績の概要 |
「研究の目的」性分化疾患(DSD: Disorders of sex development)は、出生時の外性器異常、思春期発来異常および不妊の原因など多彩な臨床症状を招く病態である。本症は、単一遺伝子疾患および多因子疾患として発症する。本研究の目的は、DSD症例の検体を用いて網羅的遺伝子解析を行うことにより、DSD疾患発症に関与する遺伝子を同定、ヒトの性分化機構を明らかにすることである。 「研究成果」MAP3K1遺伝子機能亢進変異は、精巣形成不全による46,XY DSDの発症原因として報告され、これまで15種類の塩基置換が発症遺伝子変異として登録されている。しかし、これら塩基置換の機能解析はほとんどされておらず、数種類の塩基置換のみが1つのグループにより機能解析されているのみである。研究代表者は、46,XY DSD患者のMAP3K1遺伝子の変異スクリーニングを行い、すでに兄弟例よりナンセンス随伴性スプライス変更を呈するMAP3K1遺伝子の塩基置換を同定していた。最終年度はさらに、3例からヘテロ接合性のミスセンス変異を同定した。現在、MAP3K1発現ベクターの作成が終了し、HEK293細胞およびNT2/D1細胞に導入を行って機能解析を進めている。この成果は、科学論文雑誌に発表する予定である。 研究代表者は上記の研究の他に、ARの機能を反映するバイオマーカーの同定、NR5A1遺伝子変異の同定された46,XX精巣性DSDの臨床像、胎児発達遅延を伴う46,XY性分化疾患患者におけるMIRAGE症候群の同定についての論文報告にも参加した。
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