研究課題/領域番号 |
16K09981
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研究機関 | 社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団兵庫県立リハビリテーション中央病院(子どもの睡眠 |
研究代表者 |
中井 昭夫 社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団兵庫県立リハビリテーション中央病院(子どもの睡眠, 子どもの睡眠と発達医療センター, 副センター長 (50240784)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発達性協調運動障害(DCD) / 神経発達障害 / M-ABC2日本語版 / ニューロリハビリテーション |
研究実績の概要 |
発達性協調運動障害(DCD)の神経基盤は未だ明らかではないが、運動の内部モデル、ミラーニューロンの障害などが仮説としてあげられている。今年度は、開発中のMovement Assessment Battery for Children-2nd edition (M-ABC2)日本語版のmanual dexterityの項目を手先の巧緻性の指標に、また、視覚フィードバック遅延検出課題を用いた視覚-運動の時間的統合機能の定量的評価、運動観察干渉課題を用いた自動模倣機能の定量的評価を実施した。結果、視覚-運動時間的統合能力は年齢に伴い向上するが、定型発達と比較しDCDでは視覚-運動時間的統合機能と自動模倣機能が有意に低下していた。また、DCDと注意欠如・多動性障害(AD/HD)特性、自閉症スペクトラム障害(ASD)特性は有意に相関していた。これらから、DCDの神経基盤のひとつとして内部モデルおよびミラーニューロンシステムに共通した脳部位である頭頂葉および小脳の機能、または発達不全がが示唆された。また、AD/HDの治療薬であるアトモキセチンがDCDにも有効である可能性について検討したところ、一部の症例で、特に、手と目の協応やバランスに対し効果が認められた。ノルアドレナリン神経はドパミン神経分布のない小脳にも広く分布し、アトモキセチンによる改善はメチルフェニデートとは異なる作用機序が示唆された。今後、脳波などニューロイメージングの手法も組み合わせ、DCDの神経基盤についてより詳細に検討し、従来の療育に加えて、ヴァーチャルリアリティなどによるニューロリハビリテーション、薬物療法など包括的な介入方法の開発につなげていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データなどは集積しつつあり、一部の成果については学会発表も行っており、また、論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に開発したDCDにおける運動の内部モデルに関する視覚フィードバック遅延検出課題を用いた視覚-運動の時間的統合機能の定量的評価と、ミラーニューロンに関する運動観察干渉課題を用いた自動模倣機能の定量的評価を用いて、脳波などを用いて脳機能データの計測と解析を行う。DCDのある小児についての薬物療法での協調への効果についても更に、症例を蓄積していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
連携研究者の施設保有の機器で予備的な検討を十分行えたことに加え、当該施設の設置場所の改修予定、更に、年度途中で購入予定の後継新機種の発売予定が発表となり、購入をその後に延期したため、今年度の物品費を圧縮することが可能となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降の研究の進捗状況や購入予定の後継新機種の発売時期、またその発売直後の評価、不具合情報などの有無を確認しながらより有益な研究費使用に務めていく。旅費に関しては、国内学会の他、次年度は国際DCD学会(DCD-12)での発表予定である。
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