研究課題/領域番号 |
16K09985
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北中 幸子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30431638)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 疾患特異的iPS 細胞 / Kenny-Caffey症候群 / 低身長 / 副甲状腺機能低下症 |
研究実績の概要 |
Kenny-Caffey症候群2型(KCS2)は、著明な低身長、副甲状腺機能低下症、長管骨の骨膜肥厚などを特徴とする症候群である。KCS2の原因遺伝子FAM111Aは、エクソーム解析により我々が同定した遺伝子である。しかし、FAM111Aの生体内における機能はほとんどわかっておらず、一つの変異によって、なぜ多彩な表現型をきたすのか、そのメカニズムは全く不明である。本研究では、FAM111Aの変異によっておこる症状の発症メカニズムを、患者の細胞から作成した疾患特異的iPS細胞を用いて解析することを目的とする。多彩な症状がある中で、まず特に骨伸長の障害による低身長の発症メカニズムを解析する。本疾患の低身長は、成長軟骨の異常を伴っており、何らかの機序により、軟骨細胞の分化増殖の異常をきたしている可能性が考えられる。そこで、患者由来の疾患特異的iPS細胞を用いて、軟骨等の細胞を作成し、FAM111Aによる骨伸長のメカニズムを検討する。将来的には、そのメカニズムに作用する薬剤を探索することにより、新規低身長治療薬の開発につなげたい。本年度は、患者からの疾患特異的iPS細胞の作成を行った。患者に当施設に来院してもらい、施設の倫理委員会の承認と、患者家族の同意を得て、血液を採取し、iPS細胞の作成を行った。患者は、全国から集めた2例から行い、それぞれ複数のクローンを獲得した。現在、iPS細胞を増やしており、今後、分化誘導を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疾患特異的iPS細胞を作成が終了した。現在細胞を増やして研究中である。
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今後の研究の推進方策 |
iPS細胞から軟骨細胞への分化誘導と解析を行う。軟骨細胞への分化誘導は、すでに連携研究者の斎藤らが確立した方法を用いて行う。疾患特異的iPS細胞と、正常コントロールを比較して行い、軟骨への分化速度、形態の観察、軟骨マトリクス染色、軟骨に発現するCOL2A1、COL10A1、PTH、PTHrPなどの遺伝子発現を比較する。現在、培養軟骨細胞であるATDC5細胞や初代軟骨細胞を用いて、FAM111Aの野生型及び変異体の発現による変化を解析しているところであり、その結果をもとに、FAM111A変異によって起こりうる変化を、分化誘導した軟骨細胞を用いて検討する。さらに、疾患と対照の発現遺伝子の違いから予測される関連因子や、発現遺伝子や蛋白を網羅的に比較して、表現型に蜜に関連するFAM111Aに直接制御される候補因子を特定する。既知の因子であれば、その発現をコントロールする遺伝子群の変化を解析する。これまでの研究から、FAM111Aの作用部位は軟骨と考えているが、骨細胞である可能性もある。現在、培養骨細胞におけるFAM111Aの発現や、変異体導入による変化をみているところであり、骨細胞に異常が認められた場合は、骨細胞への分化誘導実験も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
iPS細胞の作成を依頼した施設が移転することになって作成が遅れたため、使用予定のiPS細胞培養の試薬を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度中に複数家系のiPS細胞を作成できたため、現在iPS細胞の研究を順調に推し進めているところである。次年度、培養用の培地や試薬に使用予定である。
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