研究課題/領域番号 |
16K09986
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
稲葉 雄二 信州大学, 医学部, 特任教授 (30334890)
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研究分担者 |
本林 光雄 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (90747940)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サイトメガロウイルス / 先天性サイトメガロウイルス感染症 / 大脳白質 / 海馬回転異常 / 遺伝子多型 / 神経発達症 / ガンシクロビル |
研究実績の概要 |
先生性サイトメガロウイルス感染症(以下、cCMV感染症)における中枢神経合併症の免疫学的機序の解明を目的に、以下の検討を行い実績を得た。(1)大脳白質病変の大きさと知能指数は有意な正の相関を持ち、白質病変が認知機能に影響していることが判明した。(2)cCMV感染症患者では高率に海馬の形成異常を認めた。(3)cCMV感染症患者では高率に自閉スペクトラム症などの神経発達症を合併しているが、大脳白質病変の大きさ、位置、海馬形成異常、難聴の程度などとの相関を認めなかった。(4)cCMV感染症患者の末梢血リンパ球を用いてサイトカインやToll様受容体(TLR)などの免疫関連遺伝子の多型性について解析したところ、TLR-2、TLR-9、IL-12B、CCL2、NKG2Dにおいて遺伝子多型と中枢神経病変の重症度に関連が示唆された。(5)患者末梢血リンパ球を用いてELISPOT法によるメモリーT細胞の機能について検討を試みたが、実施した患者の細胞からは十分な反応が得られなかった。(6)登録された患者において、生後早期にガンシクロビルを使用した群では、使用しなかった群に比較して、出生時の画像から予測される発達予後が良好であると考えられた。 以上の結果から、CMVの胎内感染によって大脳白質病変や海馬回転異常など多岐にわたる中枢神経合併症をきたす事が示された。その際には、自然免疫に関与する遺伝子の多型が修飾因子の一つとなって、症状の多様性を示していると考えられる。生後早期のガンシクロビルによる治療は有効であることから、出生後もウイルスによる中枢神経病変は進行している可能性が示唆される。今後、遺伝子多型の検索も念頭に高危険群を精度よく抽出して、個々の症例に見合った治療方法の確立が望まれる。
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