研究実績の概要 |
本研究ではヒト誘導多能性幹細胞(iPS細胞)を用いて遺伝性筋疾患の分子病態を改善しうる低分子化合物等の検索を実現するための基盤技術として、iPS細胞の未分化状態の維持培養法の違いによって生じる骨格筋分化効率や分化度の差異について、主として細胞外環境がiPSCからの骨格筋への分化び与える影響の観点から解析を試みた。また得られた知見と分化誘導法の改良により、これらのiPS細胞が大規模薬剤スクリーニング(HTS)系に利用出来るかどうかを検討した。 研究協力者の開発したMyoD1遺伝子導入iPS細胞株を、従来法での培養条件から、mTeSR1/Matrigel、Essential 8/Vitronectin、StemFitAK02N/iMatrix-511、S-medium/Synthemax等に馴化培養し、増殖能や形態、未分化マーカー発現等の評価を実施した。その後、mTeSR1/MatrigelおよびStemFitAK02N/iMatrix-511の維持培養系を経たiPS細胞を用いて骨格筋分化培養を行った。骨格筋分化培養は、既報の培地組成でMatrigel、Laminin-521, -511, -421, -411, -221, -211, -121, -111等の細胞外マトリクス上で分化培養を行い、筋管細胞の形成について評価した(未発表データ)。いくつかの条件での馴化培養時と分化培養後の遺伝子発現の網羅的解析を実施しており、それらのデータと合わせ、次の段階の検討を行う予定である。 Matrigel基質上でのHTS至適化については、細胞株、細胞播種時期、細胞数を調整してばらつきの低減を行うことにより、96-ウェル細胞培養プレート内では比較的均一な培養状況が得られ、384-ウェル細胞培養プレート等の大規模化も概ね可能との結果を得た。
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