研究課題
アイトラッカー(眼球運動追跡装置)を用いて、マルチモーダル(多様な)言語情報処理の神経機構を子どもの発達という観点から明らかにすることが、本研究の主要な目的である。九州大学でフォロー中の200人を超える子どもの前向きコホート集団を対象として、平成28年度、30年度までに、それぞれ2歳・4歳時点での検査が終了していた。本研究の対象である6歳時の検査については、令和元年度まではデータ収集は順調であったが、令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響により検査を制限する必要があり、参加者数が大きく減少してしまった。この研究に付随して、言語情報処理課題から得られる情報を補完・補足し解釈をより精緻化するために注意実行機能を測定する課題も実施していた。その生理学的意義を確立するために、成人21名を対象としてアイトラッカーと事象関連電位の同時計測のデータを収集し、令和3年度には、この同時計測で得られた結果の解析を完遂することができた。この課題では、左右に提示される視覚刺激について、手で反応する条件と視線で反応する条件の2つを設定した。行動レベルでは、手での反応時間よりも視線での反応時間が有意に短かったが、電気生理で計測した指標としては、選択的注意に関わる電位であるP3の潜時や振幅に2つの条件の間で差がなく、手での反応でも視線での反応でも脳内機構に明らかな差がないことを証明することができた。この結果は、本研究の課題で得られる結果を、これまでに成人で蓄積されてきた知見と結びつけることができる重要な証拠となると考えられた。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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