研究課題
本研究では、臨床応用を念頭に、てんかん動物モデルに対して骨髄間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)を非侵襲的方法である経静脈的に投与し、その有効性を、てんかん予防、てんかん治療、認知機能改善の観点から検討する。実験てんかんラットモデルとして、リチウム-ピロカルピンの投与により、①てんかん急性期投与モデル:てんかん急性期投与モデル:けいれん重積後すぐにMSCを投与することで、後のてんかん発症を予防するかどうかをみるてんかん急性期投与モデル。②てんかん慢性期投与モデル:けいれん重積後にてんかんを発症したラットにMSC投与を行い、てんかんを軽減するかどうかをみるてんかん慢性期投与モデルを作成する。これらのモデルに対して、MSC移植によるてんかん発症予防と認知機能の改善とそのメカニズムの検討を行う。けいれん重積後にMSC移植を行うことで、てんかん発症予防効果と認知機能(モリスの水迷路)改善効果を検討する。さらにそのメカニズムを、以下の2点に注目し、画像的、組織学的に明らかにする。1、ニューロン、特に抑制ニューロンの消失に対する効果:けいれん後の海馬ニューロン消失に対する移植細胞の阻害効果、特に抑制ニューロンであるGABAニューロンに注目する。2、異常神経回路形成に対する効果:移植細胞が、海馬歯状回における苔状線維萌芽などの神経再構築を阻害する作用を画像的、組織的に明らかにする。リアルタイムに苔状線維萌芽をとらえることができる非侵襲的なマンガン造影MRIを用いる。これらの二種のてんかん投与モデルに対して、MSCの有効性を検討する。以上のように、補助金は補助条件に従って、有効に使用されている。
2: おおむね順調に進展している
てんかん急性期投与モデルに対し、MSCの有効性を示せた。成体ラットに、リチウム・ピロカルピンを投与することで、60分のけいれん重積を起こさせ、けいれん頓挫24時間後、別ラットより分離・培養したMSC をこのてんかんモデルラットに経静脈的に投与した。対照としてけいれんなし群、けいれん重積+DMEM同量投与群をおいた。MSCは対照群と比し、自発痙攣予防効果、認知機能低下予防効果、海馬の細胞減少予防効果、苔状線維発芽予防効果を示した。本内容は、Epilepsy Res 141: 56-63.に掲載した。
今後は、てんかん慢性期投与モデルを用いる。けいれん重積後14日、60日後といった慢性期にMSCを投与することにより、MSCのてんかんラットに対する治療効果をけいれん減少効果、認知改善効果、細胞消失、異常神経回路形成の点から検討する予定である。
<理由>当該年度(2017年度)は、主に急性期投与モデルに対する論文執筆および慢性期投与モデルの予備実験を主に行った。実際の必要物品費が最低限度で抑えられたため、使用額が少なかった。<使用計画>本研究計画が順調に経過した場合、動物代、試薬代、培養器具代などの消耗品に使用する予定である。
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Epilepsy Reserch
巻: 141 ページ: 56-63
10.1016/j.eplepsyres.2018.02.008