研究課題/領域番号 |
16K09995
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
山形 崇倫 自治医科大学, 医学部, 教授 (00239857)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / マイクロアレーCGH / 染色体微小変化 / 概日リズム |
研究実績の概要 |
1. CNVおよび病因遺伝子同定と機能解析: aCGH解析を、17年度は自閉スペクトラム症(ASD) 患者27名、知的障害を持つ患者37名に実施した。ASD患者 27例中、病因との関連が示唆される重複が1例、欠失が1例に検出された。その欠失例では11番染色体の短腕(11p14.3)に父由来の約2.2Mbの欠失があり、その中にGAS2という微小管と細胞骨格の形成および、アポトーシス調整に関与する遺伝子が含まれていた。父も自閉傾向があるとのことで、本症例の病因である可能性が考えられた。今後、GAS2のマウスで脳の形成期での発現、シナプスでの機能の有無や他の患者での変異解析等により、神経発生への関与と、ASDの病因であることを確認する。また、全エクソーム解析で候補遺伝子と考えられた遺伝子変異と疾患の関連性解析を継続している。 2. 概日リズム関連遺伝子解析:以前の解析で、いくつかの概日リズム関連遺伝子変異を検出しており、これまで、その一つであるNR1D1と神経形成、ASDとの関連を示した。また、TIMELESSのノックアウトマウスの行動解析で行動の違いが検出され、解析継続中である。同様に変異が検出されているPER3が、胎児脳へのエレクトロポレーション法での発現抑制により神経細胞の移動に影響していることなどが確認され、神経形成に関与していることを示した。また、患者での変異解析により、複数の変異が検出された。ASDの候補遺伝子として、さらに解析中である。 3. 治療法開発:生理学との共同研究で、オキシトシン作用と関連する物質であるASD治療候補薬が選定された。ASD患者に対する臨床研究を実施する計画を立案し、倫理委員会の承認を得た。18年度に臨床研究実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A. ASD患者を対象とした病因遺伝子解析として、CNV解析を実施し、検出された遺伝子の他の患者での変異解析、概日リズム関連遺伝子のエクソンキャプチャーによる変異解析、全エクソーム解析に着手、およびマウス子宮内遺伝子導入技術等による遺伝子機能解析を計画した。 ASD患者におけるCNV解析は37例にとどまったが、複数の候補遺伝子が抽出され、遺伝子機能解析を行っており、今年度は、さらにGAS2遺伝子が有望な候補遺伝子として挙げられている。ほぼ計画通りに実施されている。 全エクソーム解析に関しては、8例に実施した結果の解析から、候補遺伝子が挙げられ、解析行っており、順調に進んでいる。 B.概日リズム関連遺伝子の機能解析では、 概日リズム関連遺伝子のエクソンキャプチャーによる変異解析は、以前の解析で候補遺伝子が数個検出され順次解析している。NR1D1とASDとの関連を報告し、概日リズム関連遺伝子群がASD候補遺伝子として有望であることを示した。PER3の解析でも、神経形成、ASDとの関連を示す結果が得られて来ており、順調に進んでいる。患者変異細胞解析とiPS細胞作製に関しては、iPS細胞はまだ作製されていない。これまで解析した遺伝子に関しては、iPS細胞がなくても解析可能であり、iPS細胞が必要と考えられた遺伝子のみ作成する。Timelessノックアウトマウスの解析継続中であるが、行動異常、患者での変異も同定され、有望な結果が得られてきており、順調である。 C. 治療介入研究は、29年度以降に検討予定であったが、既に治療候補分子が選定され、臨床研究実施準備が出来ており、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析で、順調に結果が得られており、解析を継続する。 CNV解析、および全エクソーム解析も継続する。解析数を増やすことよりも、これまでの解析、および概日リズム関連遺伝子解析で同定されている候補遺伝子の機能解析および疾患との関連性の確定を中心に実施する。 iPS細胞は、機能解析等で作製すべき遺伝子の変異が検出された場合には作製する。 治療法開発に関しては、オキシトシンに関連した作用を持つ薬物が有望であり、臨床研究の計画書の作成済で、倫理委員会の承認も得た。18年度に臨床研究実施予定である。また、他の治療候補薬の検索、遺伝子治療法開発に向けた研究は継続する。
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