① 自閉スペクトラム症(ASD)および知的障害等の発達障害患者の病因遺伝子同定のため、マイクロアレーCGHによる染色体微小変異(CNV)を同定し、その領域のシナプス関連遺伝子等の候補遺伝子抽出、CNVが検出されなかった場合にはエクソーム解析を実施する研究を継続した。ASD患者でCNVが検出されているが、疾患関連遺伝子の同定には至っていない。さらに、CNV領域のマイクロRNAの疾患との関連を解析した結果、1例でMir935を含む領域のde novoの重複が同定された。患者リンパ球を用い、Realtime PCRでMir935の発現が増加していることを確認した。さらにMir935によって発現が調節されるSTAT1の発現が患者で低下していることを確認した。ASDの発症にマイクロRNAが関連することが示唆された。また、発達遅滞患者の遺伝子解析で、SOX9およびCLN6の変異を検出した。 ② ASD患者に対するサーカディアン関連分子の遺伝子解析で、候補遺伝子が複数同定され、各遺伝子の神経発生とASDとの関連を解析している。その一つであるPer3の解析を行った。マウス胎児にiRNAをエレクトロポレーションで導入しPer3の発現を抑制した結果、神経細胞移動と神経突起伸長が障害されることが検出され、Per3が神経細胞の成熟と神経ネットワーク形成に関与していることを示した。PER3は、ASDの病因遺伝子の一つと考えられる。 ③ マウスで社会性の改善作用と肥満抑制効果が確認されている物質について、ASD患者に対する有効性を確認する臨床研究を計画し、倫理委員会の承認を得た。現在、同意が得られた患者に治療を開始している。
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