研究課題/領域番号 |
16K09996
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石井 智弘 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (70265867)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | STAR / StAR / 先天性リポイド副腎過形成症 / ステロイドホルモン生合成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、Star欠損ステロイドホルモン産生細胞株、Cre-loxPによる時期なしい組織特異的Star欠損マウスを作成し、StAR非依存性のコレステロール転送経路の正常生理と病態生理の双方の解明を目指すことである。 1) Star欠損Y1細胞株によるStAR非依存性コレステロール転送経路の生化学的特性の解明 平成28年度に同定した二種類のStar欠損Y1細胞株を用いて、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素阻害薬添加下のプレグネノロン産生能を野生型Y1細胞株と比較し評価した。その結果、StAR非依存性コレステロール転送経路が存在すること、同経路がcAMPに依存することを初めて確認した。 2)タモキシフェン誘導型の時期特異的Star欠損マウス、性腺特異的Star欠損マウスの作成 平成28年度に同定した組み換えES細胞株からキメラマウスを作成し、Star floxedヘテロ接合性マウスを作成した。Star floxedヘテロ接合性マウスとCAG-Creリコンビナーゼ/Ert1トランスジェニックマウスを交配し、CAG-Cre/Ert1陽性 Star floxedホモ接合性マウス(タモキシフェン誘導型時期特異的Star欠損マウス)を作成した。タモキシフェン誘導型時期特異的Star欠損マウスは、タモキシフェン非投与下では野生型マウスに比べ体格や妊孕性に有意差を示さなかった。Star floxedマウスとCyp17a1-iCreリコンビナーゼトランスジェニックマウスを交配し、Cyp17a1-iCre陽性 Star floxedマウス(夾膜細胞特異的ないしLeydig細胞特異的Star欠損マウス)を作成した。夾膜細胞特異的Star欠損マウス、Leydig細胞特異的Star欠損マウスは週齢8の時点では妊孕性を保持し、Star欠損に特徴的な性腺へのコレステロールエステル蓄積も認めなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Star欠損ステロイドホルモン産生細胞株、Cre-loxPによるタモキシフェン誘導型時期特異的ないし組織特異的Star欠損マウスともにほぼ計画通りに進行している。
ただし、Star欠損ステロイドホルモン産生細胞株を用いたヒト先天性リポイド副腎過形成症のSTAR機能解析に関しては、平成30年度に行う予定とした。これは、Star欠損Y1細胞株の増殖能が低いことに起因する。また、夾膜細胞特異的Star欠損マウス、Leydig細胞特異的Star欠損マウスは週齢8の時点では表現型を示さなかったため、週齢24以降の長期の表現型を観察することとした。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度の業績を踏まえて、平成30年度は以下のように本研究を推進していく予定である。 1) Star欠損Y1細胞株によるSTAR機能解析とStAR非依存性コレステロール転送経路の関連分子の同定 Star欠損Y1細胞株に野生型ヒトSTARおよび先天性リポイド副腎過形成症で報告されている変異STAR cDNAを導入し、野生型および変異STARのノックイン細胞株を作成し、STAR機能解析を行う。別法として、Star欠損細胞株に野生型および変異STAR cDNAを一過性ないし安定的に強制発現させる系を検討する。 Star欠損細胞株と野生型細胞株のトランスクリプトームをRNAシーケンスにより比較解析する。Ingenuity Pathway Analysis(IPA)によりStar非依存性コレステロール転送経路に関連する分子、既知パスウェイを同定し、同経路に関連する分子や既知パスウェイをステロイドホルモン産生細胞株でsiRNAによりノックダウンしてプレグネノロン産生能を評価する。 2) 時期特異的ないし組織特異特異的Star欠損マウスにおけるStAR非依存性コレステロール転送経路の障害機序の解明 週齢6-8の CAG-Cre/Ert1陽性 Star floxedマウス(タモキシフェン誘導型時期特異的Star欠損マウス)にタモキシフェンを投与し、副腎皮質・性腺でのコレステロール蓄積、酸化ストレス、慢性炎症、StAR非依存性コレステロール転送経路関連分子の発現を経時的に評価する。また、週齢8以降のCyp17a1-iCre陽性 Star floxedマウス(夾膜細胞特異的ないしLeydig細胞特異的Star欠損マウス)の性腺でのコレステロール蓄積、酸化ストレス、慢性炎症、StAR非依存性コレステロール転送経路関連分子の発現を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である
(使用計画) 平成30年度の消耗品購入および動物飼育費に充当する予定である
|