研究実績の概要 |
ミトコンドリア呼吸鎖はミトコンドリア内膜に局在する大分子複合体であるが、Blue Native 電気泳動 (BN-PAGE) では、呼吸鎖複合体を分解することなく泳動することができ、引き続くイムノブロット解析により複合体の量及び大きさを評価することが可能である。 従来より行っていた複合体I, II, III, IVの評価に加え、平成28年度は複合体Vの評価に適した検査系を確立した。複合体Vはタンパク複合体を保ったまま泳動することが難しく、またイムノブロット法で用いる抗体の選定にも時間を要したが、患者診断に用いることが可能な条件を決定することができた。 また、呼吸鎖酵素活性についても測定系を立ち上げたが、これについても従来他施設でも行われている複合体I, II, III, IVの評価に加え、複合体Vの機能評価も可能な体制を整えた。ATP合成をみることは不可能であるが、逆反応をみることで複合体Vの活性を評価することができ、validationも終了した。 BN-PAGEによる呼吸鎖酵素の量的変化、分子量変化の評価、酵素活性による機能評価をあわせることにより、ミトコンドリア病患者の診断に役立てることができる。従来ミトコンドリア機能と無関係と考えられていた遺伝子異常が患者で見出され、ミトコンドリア病の疾患概念が広がりをみせている現在、これらの複数の検査方法を用いて多角的にミトコンドリア異常を証明することは、患者診断上極めて重要かつ有効だと思われる。また、従来診断が難しかった複合体V欠損症についても評価ができるようになったことも、臨床面における重要性が高い。
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