研究実績の概要 |
福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)患者43例(0-29歳:平均9歳)のPGE2尿中代謝物(t-PGEM)PGD2尿中代謝物(t-PGDM)を測定した結果,有意に高値であり,特にt-PGEM高値は著明であった.遺伝子型では有意差はなく,臨床型では,重症・典型例に比較し,軽症例が有意差をもって低値であった.患者の筋病理の免疫組織染色における,壊死筋でのPGD, PGE合成酵素(H-PGDS,mPGES-1)発現評価は,mPGES-1は筋全体で弱陽性,壊死筋の一部でH-PGDSは陽性であったが,Dcuhenne型(DMD)ほど明確ではなかった. FCMD疾患モデルマウスとして,糖鎖欠損を呈するヒト3kb型挿入変異/fukutin KO型複合へテロマウスと正常対照マウスの尿中代謝産物を測定した結果,疾患マウスではt-PGDM,t-PGEM共に高い傾向にあったが,4週齢では有意差はなく,8週齢でt-PGDMのみ有意差をもって高値だった. t-PGEMにおいては,正常対照において4週齢に比較し,8週齢で高値を認め,加齢とともに増加した.20週齢の対照および,疾患マウスにアスピリンを低用量100mg/kg/日,高用量300mg/kg/日投与し,投与後2週,4週間で評価を行った. 20週齢では,t-PGDM,t-PGDMともに疾患マウスと対照では有意差はなかった.アスピリン投与により,対照,疾患マウスともに,高用量投与によりPG尿中代謝物の低下が認められたが,有意差には至らなかった.アスピリン投与前後で,免疫染色による PGD,PGE合成酵素発現評価では投与前後でも有意な差は認められなかった.FCMDでは,DMDと同様,プロスタグランジンの病態への関与は示唆されたが,臨床症状および筋病理変化に乏しい疾患マウスでの評価では評価に限界があり,今後は適切な疾患マウスの開発が必要と考える.
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