レット症候群(RTT)は、主に女児で発症し、X染色体上のMethyl-CpG-binding protein 2遺伝子(MeCP2)の変異によって引き起こされる重度の神経発達障害である。生後まもなくは、一見正常に見えるものの、乳児期早期から筋緊張低下や自閉傾向、乳児期以降も年齢依存的に、発達停滞、言語や運動機能の退行、てんかん発作や呼吸を含む自律神経異常を呈するなど、様々な神経症候がみられる複雑な病態を示す。しかしながら、未だMeCP2欠損によるRTT病態の発症メカニズムは不明であり、発病メカニズムの解明、治療法の確立が切望されている。 近年、様々な神経・精神疾患の病態メカニズムにおいて、炎症の関与が報告されており、自閉症など発達障害、統合失調症などの神経・精神疾患におけるミクログリアの役割が注目されている。実際、RTT病態においてもミクログリアの関与が報告されており、ミクログリアの制御によるRTT治療法の開発が期待されている。しかし、ミクログリアの病態メカニズムへの関与については、不明な部分が多いのが現状である。 本研究で、我々は、MeCP2欠損の病態モデルES細胞やマウスを利用して、ミクログリアを中心とした免疫系のRTT病態における役割を解析した。その結果、病態モデルES細胞や初代培養ミクログリアでは、Mecp2欠損により、遺伝子の発現が変化するものの、その機能異常は明らかではなく、ミクログリアや免疫システムに関わる因子が病態に関わる可能性が示された。
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