研究課題/領域番号 |
16K10010
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
東 寛 旭川医科大学, 医学部, 教授 (00167909)
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研究分担者 |
更科 岳大 旭川医科大学, 大学病院, 助教 (40431407)
高橋 弘典 旭川医科大学, 医学部, 助教 (50431408) [辞退]
岡嶋 一樹 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (70213931)
酒井 宏水 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70318830)
吉田 陽一郎 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (80750306)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リポソーム / マクロファージ / MDSC / iNOS / NFkB |
研究実績の概要 |
ラットにリポソームを投与すると脾T細胞の増殖が抑制されるという現象について解析を進めている。 今までに、T細胞の増殖を抑制する細胞は、脾内に存在するリポソームを捕捉した脾マクロファージである事、NOが直接的なeffector分子である可能性、リポソームを捕捉したB7-H3分子を細胞表面に発現したマクロファージがT細胞の増殖を抑制している可能性を示す実験結果を得てきた。これらの結果はリポソームにより誘導される抑制性細胞がいわゆるmyeloid derived suppressor cell(MDSC)に類似の細胞である事を強く示唆している。 今年度は、反応系中のB7-H3陽性細胞の数依存性にT細胞増殖が抑制される事を示し、より明確にB7-H3陽性マクロファージがT細胞増殖抑制に関与している事を示す事が出来た。 しかしながら、抗B7-H3抗体によるブロッキング実験では、明らかな、抑制の解除を得る事が出来なかった。ブロッキングは使用した抗体の種類よる影響を受けやすいので、この事が必ずしも、B7-H3分子の関与を否定するものではないと考えられる。 一方、B7-H3陽性細胞では、iNOSが発現している事を示す事が出来たので、この事はB7-H3陽性細胞がT細胞増殖抑制効果を有している事と矛盾しないと考えられた。さらに、B7-H3陽性細胞では刺激伝達経路(NFkB経路)の活性化に関与するIkba分子のリン酸化が誘導されている事を示す事が出来た。この事から、B7-H3の細胞表面への発現誘導にはNFkBを介する刺激伝達系の活性化が関与している可能性があると推定できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
B7-H3分子の直接的な関与を示す事が出来なかったが、B7-H3陽性となった細胞で、iNOSが産生されている事、B7-H3分子の細胞表面への発現誘導に、NFkB経路の活性化が関与している可能性を示す事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
リポソームの捕捉により、NFkB経路が活性する事は、興味深い。なぜなら、今までの結果では、リポソームの投与によりIL-1やIL6等のproinflammatory cytokineの産生の増強は観察されていなかったので。 今後は、リポソームを捕捉したマクロファージ内でNFkB経路が活性化する機序を解析するために、リポソームの捕捉がどのような機序で行われるのかに焦点を当てて研究を進めたい。リポソームは直径250nmの小さな粒子であり、これらの小粒子がマクロファージに貪食される機序は、エンドサイトーシスやピノサイトーシスなどのプロセスが考えられる。リポソーム粒子がマクロファージに捕捉される場合にどのようなプロセスを介するのかを、それぞれのプロセスの抑制剤を用いて検討する。また、その機序とNFkB経路の活性化との間にどのような関係があるのかを検討したい。得られる実験結果から、MDSC細胞が生体内で誘導される機序を推定する事ができると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
刺激物の生体内投与による脾細胞の刺激伝達系の解析においては、蛋白にリン酸化がもっとも顕著に観察される時間が、通常のvitroにおけるものと異なるため、最適な時間を設定するのに多くの時間を費やしてしまったため、解析した蛋白質がIkbaのみに終わってしまった。MAP キナーゼ等の解析の為の抗体の購入は次年度に持ち越しという状態となった、 残った助成金は、残った刺激伝達系の解析の為の各種抗体や、貪食作用抑制の為の各種試薬の購入などに充てる予定である。
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