研究課題
我々は、ある種のリポソームをラットに投与すると脾臓内にT細胞の増殖を強力に抑制する活性を有する細胞が一過性に誘導されることを見出した。リポソームが生体の免疫応答にこのような影響を与えるとう報告は今までないので、この細胞について詳細な検討を行うこととなった。その結果、リポソームと貪食した脾マクロファージがB7-H3を発現するようになる事、また、脾細胞からB7-H3陽性細胞を除去するとT細胞の増殖抑制効果が解除されることを確認する事ができた。従って、T細胞の増殖を抑制する活性を持つ細胞のマーカーの一つがB7-H3分子であることが確認された。B7-H3分子がT細胞抑制機能に直接的に関与しているか否かをB7-H3に対する抗体を用いて検討した。用いた抗体では、当該細胞によるT細胞の増殖抑制効果を解除することはできなかった。しかしながら、これが必ずしも、B7-H3分子の関与を否定することにはならないと思われる。さらに、リポソームを貪食したマクロファージでは、iNOSが発現していること、及び、Ikbaの分解を指標にして、NFkBシグナル伝達経路が活性化を検討し、リポソームを貪食したマクロファージではNFkB シグナル経路が活性化している事を確認することができた。これらの結果は、リポソームにより誘導されるT細胞増殖抑制活性を有する細胞が、myeloid derived suppressor cellと極めて類似していることを示す新たなデータとなると思われる。さらに, 腫瘍組織に集積するMDSCの一部はB7-H3分子を発現している事が報告されていることから、当該細胞は、B7-H3 陽性のMDSCに極めて類似している事が明らかになった。