研究実績の概要 |
腫瘍検体収集が順調にすすまなかったため、同じ神経膠腫のうちBRAF V600E変異が検出されている退形成性星細胞腫の髄液中のcfDNAを用いたリキッドバイオプシーに、内容を変更した。BNA(Bridged Nucleic Acid:人工核酸ヌクレオチドの総称でRNAやDNAと強く結合する)クランプ法を用いることで、髄液からのBRAF変異検出率が上昇した。 【方法】低頻度のものを検出するために、今回はdigital PCR法とBNAクランプ法を用いた、サンガーシークエンンスの両者の評価法を用いた。また、クランプシークエンス法では配列も確認できる利点がある。検体はBRAF V600E陽性の退形成性星細胞腫髄液で、陰性コントロールとして原発性中枢リンパ腫、BRAF陰性脳腫瘍の髄液を用いた。陽性コントロールとしてはBRAF陽性腫瘍由来ctDNAを用いた。cfDNA抽出はQIAGENプロトコールに準じ、Bioanalyzer systemで確認した。BRAF TaqMan dPCR Liquid Biopsy Assay (ThermoFisher)とQuantStudio 3D Digital PCR systemを使い、BRAF BNA Real-time PCR kit (Riken Genesis)のBNAとprimerを使用して解析した。 【結果】髄液の上清からcfDNAが抽出され、腫瘍由来と考えられるBRAF V600EがdPCRにより検出された。なお、BRAF V600E の割合は腫瘍の増悪、縮小を反映する可能性がある結果であったが、検証が必要だった。BNAの添加を用いて変異頻度の少ないBRAF V600Eを検出で きたが、BNAを添加しないサンプルでは変異は検出されなかった。BNA添加しないと変異頻度は約10%が限界、添加あると0.05%も検出可能だった。 以上は、Utility of a bridged nucleic acid clamp for liquid biopsy: Detecting BRAF V600E in the cerebrospinal fluid of a patient with brain tumor.Y Nakano, Y Watanabe, et al. Pediatr Blood Cancer. 2020;67:e28651.に報告をした。
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