仙台医療センター 臨床研究部 ウイルスセンターにて行われた小児ウイルスサーベイランスに於いて平成28年度はエンテロウイルスD-68(EV-D68)を検出することができなかったため、同サーベイランスで捉えた平成27年秋のEV-D68流行時(第36から42疫学週)における患者疫学像の解析を行った。 同期間中EV-D68に感染し呼吸器症状を呈した患児を確認したが、中枢神経症状を呈した者はいなかった。EV-D68陽性者(n=16)とエンテロ/ライノウイルス陽性者(n=13)及び臨床像が類似するRSウイルス陽性者(n=23)との比較では、EV-D68陽性者が他より年齢分布が高かった。また、EV-D68陽性者の年齢分布は、保存血清中のウイルス中和抗体値の比較でも確認する事ができた。一方、EV-D68陽性者では喘鳴を呈した者および喘息発作と診断された者が多かった。そこで、何らかのアレルギー感作を疑い血清中総IgE値の比較を行ったが、患者群間で有意な違いは無かった。 平成27年度秋の流行は近年稀に見る大規模であったことより、非常に多くの患者疫学像の知見を集積することができた。ウイルス学的に近いライノウイルスおよび臨床像が類似しているRSウイルスの流行も同時に捉えた事より、患者間の比較が可能となった。しかし、臨床像および患者背景にそれらウイルスと相違がなかった事より、同ウイルスが小児期の喘鳴にも深く関与していることが想定された。本ウイルスの喘鳴発生機序および喘息移行に関しては、多施設共同研究を行う方向で現在調整中である。流行したウイルスの分離に成功しており、今後のウイルス学的解析を行う。また、血清疫学の手法も確立させたので、今後検討対象年齢を拡大していく。
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