研究課題
先天性好中球減少症患者のG-CSF (CSF3)受容体切断型遺伝子異常出現の前方視的解析を引き続き行っている。本年度の解析で、該当症例のうち1症例で、stop codonのhot spotであるCSF3R 731番目のGlnの部位にSanger法の泳動像で、stop codonの要素であるTAGの波が一部混入しているのを検出した。この症例は、臨床症状には、大きな変化は無いものの、同時期に骨髄染色体解析で、8番と21番のトリソミーのクローンの出現を観ており結果的に造血細胞移植を行なう事となった。この症例は、本研究前方視的検討において、G-CSF (CSF3)受容体切断型遺伝子異常と同時期に複数の遺伝子変異が起こった初めての前方視的解析における病態悪化の実例であり、現在731stop codonの混入の割合を検討すると共に、8番、21番のトリソミー出現との関連を検討している。他の解析継続症例には、CSF3Rの遺伝子変異は観られていない。G-CSF受容体刺激伝達系関連蛋白や、TP53、RAS等についても一部遺伝子解析を行っているが、特別な変化は検出できていない。症例を前方視的に解析する方法は、もともと稀少疾患で有ること、追跡症例のリクルート数に限界があること、また追跡症例が白血病化前に造血細胞移植を施行され、解析症例から外れる場合が多いことから方法自体に限界がある。このため、2015年度に既に白血病化した骨髄機能不全患者で、生存中であり血液細胞以外の体細胞由来ゲノムを得られる患者さんについて、各々のゲノムをexome解析を行っている。全ての症例で、造血細胞移植を行われている為に、移植造血細胞の混入しない本人固有のゲノムを得ることができ、比較検討解析までできた症例は、現在までに1例だけとなった。それぞれのexomeデータのbioinformatics解析を行なっている。これを比較検討して、何とか白血病化に関連する遺伝子を抽出し、その生物学的意義を解明していきたい。
4: 遅れている
2014年11月に代表研究者自身が講座の主任教授となったことで、他の実務が増加、本研究に十分な時間をかけることが困難となった。また、稀少疾患である重症型の先天性好中球減少症の新たな症例リクルートが十分には進まず、十分な材料が得られないのも要因である。
前方視的に変異を追う中で、結果を得る為には、患者さんの病態が進まなければ結果を得ることができない。これまで行ってきたやり方では、当たりをつけた遺伝子の解析のみしかできない点を考えると、既に白血病化した検体をリクルートし、その腫瘍細胞と患者さん粘膜細胞由来等の別臓器細胞のゲノムを次世代シークエンスにより、網羅的遺伝子解析をすることで、両者間の変化から白血病化に鍵となる遺伝子の変化を解析したいと考えている。また、本年度得られた、骨髄でトリソミーが出現した症例の前後の遺伝子解析を詳細に検討して、臨床的意義のある変化を見つけて行きたい。
患者リクルート費用。また、これまでの主要候補遺伝子mRNAの配列決定検討に加え、臨床検体の病態変化前後における次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子解析の費用。この為の通信、検体配送費、検査薬等の消耗品費。また、候補遺伝子が見つかった場合、実験動物への遺伝子導入とその維持費、および解析に伴う費用等。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Pediatr Blood Cancer
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