研究実績の概要 |
1)経皮感作食物アレルギー動物モデルを作成し、経口チャレンジにより食物アレルギー症状を発症させた後、2回めの経口チャレンジ後の皮膚炎部位における網羅的遺伝子発現と小腸における遺伝子発現を測定した。その結果、皮膚局所では、TSLP,IL-4, IL-3, Mcpt8, Mcpt1のmRNAは発現が増加し、小腸粘膜ではMcpt1とMcpt2のmRNA発現の増加を認めた。皮膚炎をステロイド外用により軽減させると誘発症状が軽減されるとともに、皮膚におけるIL-4, IL-3, Mcpt8, Mcpt1と小腸でのMcpt1, Mcpt2の発現の減少を認めた。この結果から、皮膚における好塩基球活性化とTh2サイトカイン産生が、遠隔部位である消化管粘膜における肥満細胞の活性化に影響し、食物アレルギー症状を増悪させると推測された。 2)poly(lactide-co-glycolide)(PLGA)を安定剤用いたナノ粒子に抗原としてオボアルブミンを封入し、PBSに懸濁後、皮膚に塗布する方法を検討した。その結果、PBSに25% v/vのグリセロールを混合したものに懸濁した方が皮膚に効率良く塗布することができた。また、この塗布方法を用いると、抗原特異的IgEでなく、IgGが産生されることから、ナノ粒子に封入した形で抗原を投与しても、抗原が取り込まれ免疫応答を起こすことが確認できた。 3)オボアルブミンを経皮感作させ食物アレルギー動物モデルを作成し、経口チャレンジにより食物アレルギー症状を発症させた後、オボアルブミンを封入したナノ粒子を塗布して免疫療法を行うと、2回めの経口チャレンジによる誘発症状がわずかだが、軽減されることが確認できた。今後、免疫療法の効果を高めるため、アジュバントを同時に投与することが必要と考えられた。
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