研究課題
小児脳腫瘍疾患の予後は概して不良であり有効な治療法の開発が待たれる。近年、がん抗原特異的キメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子改変T細胞療法の優れた臨床成績が次々に報告されている。この治療法は標準的治療のみでは根治が難しい疾患に対する新たな方法として大きな期待が寄せられている。小児がんにおいても標準的治療のみでは根治不可能な症例が多々存在し、特に脳腫瘍においては手術にて完全摘出可能な症例のみではなく、治療経過中や終了後の疾患の増悪は大きな課題である。将来的には小児脳腫瘍疾患の分野においてもCARを用いた治療法の応用が期待されるが、固形腫瘍に対する有効性の検証データはまだ十分ではない。そこで小児脳腫瘍疾患に対する免疫療法の実用化に向けて検証を行った。成人の脳腫瘍領域では既にEGFRvIIIやIL-13Rαを対象としたCARを用いた報告が既に複数なされているが、小児においてはまだ十分な情報がない状況にある。そこで、難治性小児脳腫瘍疾患(脳幹グリオーマ、胚腫以外の胚細胞腫瘍、上衣腫、PNET等)に適した標的を免疫染色法にて現在検証中である。また本研究ではウイルスベクターではなくトランスポゾン技術によるCAR-T cell療法を予定しているため、患者条件に相違があっても安定した導入効率が得られるよう基礎的検証を継続した。一方、小児脳腫瘍疾患に対してWT1特異的細胞傷害性T細胞が一定の有効性をもたらしうることが実臨床疾患の検証にて示唆されたため、次年度以降の研究内容に引き続き検討することとした。
3: やや遅れている
今後検証に用いる小児脳腫瘍由来細胞株の準備を並行しているが、当初の予定より時間を要している。また小児脳腫瘍疾患に対するCAR-T cell療法の対象抗原が現時点でまだ完全には特定できていないため、やや遅れていると判断した。
小児脳腫瘍疾患に対するCAR-T cell療法の対象抗原を引き続き特定するとともに、CAR-T cellとがん抗原由来細胞傷害性T cellとの相乗効果について検証する。
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巻: in press ページ: in press
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