研究課題
本研究は、リンパ管腫症の発症因子および病態の解明のため、①リンパ管腫症検体から「リンパ管腫症細胞」と「異常な紡錘型細胞」を分離培養し、②「異常な紡錘型細胞」によって正常リンパ管内皮細胞からリンパ管腫症を発症するかどうかを検証することで、本疾患の発症に関わる因子を解明することを目的とする。本年は、昨年から引き続き、患者検体よりリンパ管腫細胞と異常な紡錘型の細胞を分離培養することを試みた。22歳のKaposiform lymphangiomatyosis(KLA)の症例の病変部位より採取した標本を基に、細胞培養を行った。細胞は異常な紡錘型細胞を主に増殖し、我々の計画していたリンパ管腫症細胞の分離は困難であった。しかし、これらの細胞は増殖が明らかにリンパ管内皮細胞よりも高く、治療薬の添加による細胞増殖抑制作用を確かめることができた。これらの細胞および血液細胞について、共同研究施設でエクソーム解析を行ったところ、有意な結果が得られ、現在、検証中である。またKLA患者以外のリンパ管腫症およびその他の血管、リンパ管疾患患者の血漿検体を用い、バイオマーカー検索のため、リンパ管腫症40例の患者検体、コントロール検体8を用いて、血管・リンパ管新生に関わるマーカー36項目および、骨代謝に関わるマーカー8項目をマルチプレックスアッセイシステムを用いた解析パネルで網羅的に解析した。この結果、KLAのみ有意に高い因子を見つけた。その他にも候補となる因子があり、症例の蓄積とともに再度検証たところ、疾患特異的であることが判明した。2018年5月に開かれる国際会議にて報告する予定である。
2: おおむね順調に進展している
予定通り、患者からの細胞分離に成功し、さらに遺伝子解析においても有意な結果が得られている。また細胞を用いた基礎研究として、治療薬添加による細胞増殖および、細胞内シグナル伝達についてを、MTTアッセイ、RT-PCR、ウエスタンブロッドによって検討できた。またリンパ管腫症症例について、KLA12例とGeneralized lymphatic anomaly42例に分けて、臨床学的特徴を解析した。患者血漿検体を用いた解析では、KLAの病態に関連する分子を特定することができた。
最終年度は、これまでの結果を学会発表および海外雑誌に投稿する。また特定された遺伝子等が疾患にどのように関わるか、再度検討する。また患者検体よりエクソソームを分離し、これらとの関連性を検討したい。
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すべて 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
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