研究課題/領域番号 |
16K10027
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
竹谷 健 島根大学, 医学部, 教授 (30359880)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | APOBEC3B / 小児白血病 / ウイルス感染 |
研究実績の概要 |
本研究における目的は、悪性リンパ腫や乳がんなどの遺伝子変異を引き起こす抗ウイルス因子であるAPOBEC3Bが、小児白血病の臨床検体を用いて遺伝子変異に関与していることを証明して臨床像との関連を明らかにすることである。また、APOBEC3B導入後の遺伝子変異を同定して、さらに、ウイルス感染後にAPOBEC3Bの発現が亢進して遺伝子変異を引き起こすことを同定して、それらが白血病化に関与することを証明することで、APOBEC3Bを介して小児白血病の発がん機構の一端を担うことを明らかにすることである。 今年度は、NCBIのGene Expression Omnibusに登録されている小児白血病のSNP arrayを解析した結果、小児白血病で認められる遺伝子変異のうち、C→Tへの変異が50%以上で存在することを同定した。また、TEL-AML1融合遺伝子、AML1-MTG8融合遺伝子及びAPOBEC3B遺伝子を作成して、臍帯血由来CD34細胞あるいはIL3依存性BaF3細胞株に導入できた。さらに、現在、IKAROS遺伝子、PAX5遺伝子およびp16遺伝子をshRNAで抑制した臍帯血由来CD34細胞およびTEL-AML1融合遺伝子、AML1-MTG8融合遺伝子を導入した臍帯血由来CD34細胞を作成して、pre-leukemic cloneを作成中である。 臨床検体との関連では、小児白血病の初診時の臨床検体を用いて、APOBEC3Bの遺伝子は発現をQuantitative RT-PCRで測定しており、現在、発現の程度と臨床像(病型、年齢、性、白血球数、臓器浸潤、染色体、遺伝子異常、再発、予後)との関連を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小児白血病におけるAPOBEC3B遺伝子の発現および臨床像との関連の検討およびAPOBEC3Bの白血病化への関与に関して、当初の計画の通り進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
1) 小児白血病におけるAPOBEC3B遺伝子の発現および臨床像との関連の検討 APOBEC3B遺伝子の発現と臨床像について、明らかにする。また、APOBEC3B遺伝子が発現していた検体に認められる遺伝子異常を同定して、それらの遺伝子異常の塩基置換がC→Tへの変異であるかどうかを検討する。 2) APOBEC3Bの白血病化への関与 TEL-AML1融合遺伝子、あるいはAML1-MTG8融合遺伝子を導入した細胞にAPOBEC3B遺伝子を導入後にみられる遺伝子異常を同定し、それらがC→Tへの変異であるかどうかを検討する。また、細胞の増殖能、自己複製能、アポトーシスおよび細胞周期への影響、分化能を検討して、白血病化に関与するか検討する。また、APOBEC3BのshRNAで白血病化を抑制できるかを検討する。それらの細胞をマウスに移植して、in vivoで白血病になるかどうかを調べる。 3) ウイルス感染によるAPOBEC3Bが関与する白血病化の機序の解明 作成したpre-leumemic cloneに、EBウイルス、インフルンザウイルスおよびRSウイルスを感染させて、APOBEC3B遺伝子が高発現し、C→Tに変異する遺伝子異常を引き起こすことを検討する。また、細胞の増殖能、自己複製能、アポトーシスおよび細胞周期への影響、分化能を検討して、白血病化に関与するか検討する。さらに、pre-leukemic cloneのAPOBEC3BをshRNAで抑制することで、白血病化の発症を予防できるかを証明する。それらの細胞をマウスに移植して、in vivoで白血病になるかどうかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費が当初の計画より必要なくなったため、また、物品費に関して、遺伝子作成にかかる費用が当初よりも低額で行うことが可能となったため、さらに、学会旅費を節約できたため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、今年度持ち越した費用を、人件費(謝金を含む)および細胞機能解析に用いる消耗品および新たに作成する遺伝子ベクターに使用する予定である。
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