家族性寒冷自己炎症症候群 (FCAS)は、寒冷刺激によって発熱、蕁麻疹様の発疹、関節炎を反復する自己炎症症候群である。我々は、FCASの一家系を見出し、NLRC4の機能獲得型の遺伝子変異を同定した。しかし、その発症メカニズムは不明であり、NLRC4インフラマソームの機能異常がどのようにヒト炎症病態に寄与するかを知ることは重要な課題である。我々はこれまでに、FCAS罹患者と同じNlrc4遺伝子変異を導入したトランスジェニック(Nlrc4-Tg)マウスの解析より、好中球由来の過剰なIL-1βが慢性炎症の病態に関与することを明らかにした。しかし、Nlrc4-TgマウスにIL-1βを欠損させても炎症症状が残存することから、IL-1β以外の経路も炎症病態に関与していると考えられる。 以上の背景から、本研究では、Nlrc4-Tgマウスに、IL-1βと他の炎症経路に関与する分子群を欠損させたマウスを樹立し、炎症を誘導する主要な分子を明らかにするとともに、変異NLRC4による過剰な炎症応答を制御する分子メカニズムを明らかにすることを目指している。 当該年度は、これまでに樹立した4系統の遺伝子改変マウス(①Nlrc4-Tg、②Nlrc4-TgにIl1bを単独欠損するマウス、③Nlrc4-TgにIl18を単独欠損するマウス、④Nlrc4-TgにIl1bとIl18を欠損するマウス)を用いて、自己炎症応答の有無を検討した。その結果、Il1bあるいはIl18を単独欠損したNlrc4-Tgマウスは、関節および皮膚の炎症病態が軽度残存するが、Il1bとIl18の両方を欠損するNlrc4-Tgマウスでは自己炎症病態が完全に消失することを明らかにした。本研究により、NLRC4遺伝子変異に起因する自己炎症病態を誘導する主要な分子として、IL-1βとともにIL-18が重要な役割を持つことが明らかになった。
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