研究課題
Busulfan (BU)とCyclophosphamide (CY)は造血幹細胞移植の前処置に使用されるDNAアルキル化剤で、その代謝にGlutathione (GSH)が関与することが知られている。我々はCY心毒性の機序解明を目指した研究において、CY代謝物の1つであるacroleinがCY心毒性の主因であることを明らかにした。CYの代謝にはAldehyde dehydrogenase 1 (ALDH1)が関与しており、ALDH1を介した代謝では細胞毒性の低いCarboxyethylphosphamide mustard (CEPM)の産生が増強する。一方でacroleinが産生する経路はALDH1を介さないことからacrolein産生におけるALDH1の働きは重要であると考えた。ヒト肝がん由来細胞株HepG2細胞をCYに曝露し、産生するacroleinの濃度を測定した。またCY曝露後2時間及び24時間のGSH濃度を測定した。HepG2はCYP2B6をほとんど発現していないため、CYがCYP2B6に代謝されて生じる4-hydroxycyclophosphamide (HCY)をCYの代わりに用いた。HCY曝露濃度依存的にacroleinは産生し、その産生量は曝露後1時間で最大値を示し24時間後には1/8に減少した。またHCY曝露後2時間でHCY曝露群とControl群(HCY曝露なし)のGSH濃度に有意な差は見られなかったものの24時間後にはHCY曝露群でGSHの有意な減少が見られた。続いてHepG2細胞のALDH1遺伝子をknock down (KD)した状態で同様の実験を行ったところKDの有無でHCY曝露によるacrolein産生量及びGSH濃度に有意な差は見られなかった。このことからBUやCYの致死的副作用発現機序においてacroleinの産生系よりacroleinの消去系がより重要であることが示唆された。
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