研究課題/領域番号 |
16K10034
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
西川 拓朗 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 講師 (90535725)
|
研究分担者 |
河野 嘉文 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (20260680)
岡本 康裕 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (30398002)
児玉 祐一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (20535695)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | シクロフォスファミド / 抗がん剤 / 心筋障害 / アルデヒド / アクロレイン |
研究実績の概要 |
Cyclophosphamide (CY)は急性白血病、骨髄造血不全症等の疾患に対する造血細胞移植の前処置法として最も多く用いられている薬剤である。前処置として投与される場合は大量投与となるが投与後急性に生じる心筋障害が臨床上大きな問題となっているがその機序は不明である。CYは、肝臓で様々な代謝物へと代謝される。我々はその代謝物の中でもアルデヒドであるacroleinがCY心筋障害の主因ではないかと考え、その代謝に関わるアルデヒド脱水素酵素(Aldehyde dehydrogenase1A1:ALDH1A1)との関連を明らかにする目的で実験を行なった。 以前確立したIn vitroのCY曝露実験系でN-acetylcysteine (NAC)前処理でCY心筋細胞障害の予防をできることを明らかにしたので、CY曝露とNAC投与によるマウス心筋細胞のALDH活性に与える影響を検討した。するとCY代謝物曝露によりALDH活性は低下し、NACを併用することでALDH活性が低下しないことがわかった。次にin vivoの実験を行った。6週齢のメスのC57BL/6JマウスにNAC前投与した群ならびに生食投与群を作り、その後CYを腹腔内投与し、CY代謝物であるhydroxycyclophosphamide(HCY)、carboxyethylphosphoramide mustard(CEPM)の濃度をLC/MS/MS法で、血球細胞のALDH1A1の活性をフローサイトメトリーで測定した。その結果、ALDH1A1活性はNAC濃度依存的に増加することが判明した。また、我々の測定系でマウスのHCY、CEPMの血中濃度測定も行うことができ、その薬物動態を解析することができた。HCYならびにCEPMの薬物動態(AUC:薬物血中濃度-時間曲線下面積)はNAC投与群、非投与群では大きな差は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroの実験で、CY代謝物曝露とNAC投与によるALDH活性に与える影響を検討したところ、予想通りCY代謝物曝露でマウス心筋細胞のALDH活性が低下し、NAC投与でALDH活性が上昇した。これは、本研究のテーマであるCY心筋障害にアルデヒド代謝が重要な役割を果たしていることを証明する。 in vivoの実験でもNAC投与により、血球のALDH1活性が濃度依存性にあがることも確認できた。以前の研究でin vitroの実験系ではあるがNAC前処理によりCY代謝物群曝露の心筋細胞障害を抑制することを証明しており、in vivoでもNAC投与によるCY心筋障害予防の可能性が期待できる。また、当初マウスでのCY代謝物測定が、検体量の問題でできるかどうか困難が予想されたが、今年度、測定し、薬物動態を解析できることを確かめられた。以上より、今後予定している実験の大部分が少なくとも実現可能なことを確認でき、初年度としてはおおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、まずはマウスでの実験を継続して、行っていく。今年度測定できなかったacroleinの測定を行い、動態をNAC前処理ありの時となしの時で比較していく。また、CY投与群、NAC前処理ありCY投与群での心筋細胞の病理学的差の検討も行っていく。ALDH1活性も血球細胞だけでなく肝臓や心臓での測定を計画している。ALDH1活性だけでなく蛋白量も変化がないか検討する。 その後は、ALDH1活性をRNAiでノックアウトし、CY、CY代謝物群(HCY,CEPM,acrolein)の動態解析、心筋細胞の病理学的変化を解析していく計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していたacroleinの測定ならびにRNAiの実験を開始することができなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度acroleinの測定ならびにRNAiの実験を行う予定。
|